なにかがおかしい
って言いたくなるとき、ないだろうか。
刑事コロンボみたいに、あー奥さん、最後にもうひとつよろしいですか?
細かいことが気になるのがあたしの悪い癖でしてね。
と、犯人がわかっていて問いただせるものならどんなにいいだろうか。
最近立て続けにおかしなことばかり起こる。
仕事が終わり、さあ帰ろうと家の鍵をあらかじめコートのポケットに移すのがルーティンなのだが、いつもあるはずのリュックの脇に手を差し入れても…ない。
反対側かな?同じように手を入れてもやはりない。
落ち着け。
忘れるわけないじゃないか。
そうぶつぶつ心の中で反芻しながらリュックの中のものを取り出してみる。
古くなったガムが出てきたので捨てた。
鍵はどこにもなかった。
しかたない。
仕事中である相方に祈るような思いでLINEを送った。
ここに来てくれて鍵だけ渡してくれればいい。
運の良いことにたまたま仕事で近くを走っていた相方がたまたまLINEに気づいて10分足らずで来てくれた。
鍵をもらい、ついでに駅まで送ってもらえた。
わたしの鍵は結局昨日着ていた、洗濯しようと放り込んでいたパンツのポケットに入っていた。
なぜか、といくら首を捻ってもわたしがやったことなのだ。記憶に無くても。
朝は職場の出入り口前や植栽に水撒きをするのだが、突然ホースと連結部が外れてしまい、水圧で暴れたそれはわたしに大量の水をかけて喜んだ。ように見えた。
ブラウスからベスト、スカート、ストッキング、そして袖からポタポタと垂れるほどの水浸しになってしまった。
しかたなく事務所に戻り、タオルで根気よく拭くしかなかった。
濡れたストッキングほど気持ちの悪いものはないが、そんな時に限って替えを持ってきていない。綺麗な雑巾の上に立ち、足踏みをしながら足裏の水を吸わせた。
ハプニングだと笑えない。水も滴る…言えるわけない。
朝っぱらから、なんて日だ。
まだある。
お客様に差し上げる為にカゴに細々としたグッズをディスプレイも兼ねて入れてあるのだが、それを運ぼうと持ち上げて一歩歩いたところで取っ手がブチっと切れて中身が床に勢いよく雪崩れ落ちた。
もうなによ、なんなのよ〜
思わずそうボヤいてしまった。無惨にも落ちて破けてしまったり曲がったりしてしまったものをお客様に渡すわけにはいかない。
カゴの取手は少し触っただけでボロボロと崩れてしまった。劣化だった。
なぜよりによってわたしが持ったそのタイミングで切れるのか。
かくしてカゴはゴミ箱行きとなった。
営業さん達の出入りはあるものの、事務所では基本ひとりでいることが多い。
自動ドアが開くと同時にセンサーが反応して事務所にピンポーンと聞こえるようになっている。
すなわちお客様か、業者が来たという合図だ。
先日、ガーッという聞き慣れた自動ドアの開閉の音もなく、突然ピンポーンという音だけが響いた。
すぐに防犯カメラに目をこらしても誰もいない。
玄関内もすぐ外のポーチのところや通路にもひとはどこにもいない。
時々強風でドアが揺れ開くと鳴ることはあるが、そうでない限りセンサーは反応しない。
ドアは開かないが、何かが入ってきたことを感知して鳴ったということになる。
なにかがおかしい。
水星が逆行してるから。
そう思うことにしよう。
あるいは単に疲れているだけ、なのかもしれない。
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