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十人十色、「愛」の形。
本屋さんに立ち寄る度、立ち読みしては戻すを繰り返している小説があった。
毎度続きが気になるところで戻していたので、これはもう買った方がいいのではなかろうかということで、この間、本屋さんに行ってついに買った。
村山由佳さんの「BAD KIDS」だ。
20歳年上の写真家と、体の関係は持ちつつも付き合っているのかわからない曖昧な関係を続けている都と、
同じラグビー部に所属している同性の幼なじみに密かに思いを寄せている隆之。
2人の高校生の目線を交互に織り交ぜながら紡がれる、多様な愛の形を描いた物語だ。
***
写真部に所属している都にとって、隆之はとても理想的な被写体だった。
そして、都が撮影した写真の中に、隆之が秘めていたはずの恋心がありありと写し出されてしまっている1枚があったのだ。
そんな2人の不思議な関係は、都が件の1枚を携えて保健室で休んでいた隆之に話しかけに行くところから始まる。
———わたしは、読み進めるにつれ、学校では問題児扱いされている都の人柄にぐいぐいと惹き込まれていった。
特にはっとさせられたのが、同性に恋をすることを恥ずべきことだと思っている隆之に言った言葉だ。
「あたしだってね。北崎のこと、男かどうか見極めてから好きになったわけじゃないわ。
好きになってみたら、たまたま男だったっていうだけよ。二分の一の確率。」
「あなただって、高坂くんが男だから好きになったわけじゃないんでしょう?
気がついたら好きになっていた、それだけなんでしょう?」
恋をするのに、同性か異性かなんて関係ない。
「その相手」だから、好きになったのだ。
そんな考え方の都だからこそ、20歳年齢が離れている男性に恋をしているのだろう、とわたしは思う。
彼女にとっては、好きになったら性別や年齢など取るに足らないものなのだ。
———他にも、この作品が描く「多様な愛」が表れている部分は多数存在する。
隆之が語るこの一節も、そのうちの一つだ。
一口に愛と言ったっていろんな形があると言いたいのだ。
僕と都の関係、これだって男女の恋愛ではないにしろ、まぎれもなくひとつの愛情の形ではあるはずだ。
自分のことのように相手を気づかわずにいられない、そういう気持ちを愛情と呼ばずに、いったい何て呼ぶんだろう?
男性だとか女性だとか、年上だとか年下だとか、付き合っているとかいないとか、わかりやすく目に見えるものだけでは語りきれないたくさんの「愛」。
この本を読む前と後とで、見える世界が少なからず変わるような気がする、そんな一冊だった。