ぐうたらと玉虫色の言い訳
休日のヤルコトリストは完璧だった。
洗濯、掃除、光熱費の支払い、郵便局へ行き、病院へ行き、……。
よし! と珈琲を飲み干して、着替えて、始発電車に乗れるような時間であった。
ところが。
ふと、うとうととしたかなと思い、次に起きたら朝8時だった。
なあに、まだ午前中さ。
と、余裕をこいて、朝御飯を食べ、散歩に出た。図書館へ行き、本を返し、ついでに二、三冊借りて、表へ出た。
曇り空はどんよりとしていて、あくびをひとつ。まあ、すると、どうしたわけか、ぐったりとした感覚を覚えた。そこで、いったん家へ戻り、体勢をたて直すことにした。
家へ戻り、ぐったりとしたまま、ラジオをつけて、横になる。そのままうとうとと、夢の中へ。
ボンヤリと起きると、昼の一時過ぎであった。仕方なく、納豆ご飯を食べ、豆乳を飲む。
出掛けなくては。
と用意をする。重たい空気にため息をつき、換気扇を回し、鞄を持つと、ゴロゴロという音が聞こえた。
雨かな。
と思いつつ、玄関につくと、雨が降りだす音がした。しかも、素晴らしい大雨だ。
扉を開けて、鍵を閉めたが、どしゃ降りにおののき、また鍵を開け、中へと戻った。
玄関の近くの腰掛けに座り、本を開いて読んでいった。
四分の一程読み進めた頃、雨音が小さくなったため、やっと外へ出た。
雨は小降りで、空は青空が四分の一、白い雲が四分の一、雨雲が残りの二分の一程であった。
水溜まりに映る青い空と白い雲を眺めつつ、雨の中を歩いていたら、玉虫色のビニル傘をさすお姉さんが、前の角から出て歩いてゆく。
青空と雨音と玉虫色のビニル傘。
それらはあまりにも似合っていた。それに玉虫色の風景と名付けた。写真は無理でも、詩の一つでも作ろうかと思いたち、思考の中を歩いていった。
赤信号で立ち止まると、周りは傘をさしておらず、一人傘の中でボンヤリと歩いていたものだから、あわてて傘を畳むと、雨上がりの湿った風が通り抜けた。
ああ、この季節らしいな。
と思う。
ふと、気づく。もはや夕方近く。郵便局は閉まってしまうだろうし、病院へ行くにも遅すぎる。
何もできない休日だったと、後悔の念がムクムクとわき上がる。だから、とりあえず、せめてこうして日記を書いて、自分のぐうたらな心をなぐさめておく。
最後に、もう一度、言っておこう。
休日のヤルコトリストは完璧だった。
なのに、申し訳なく思う。
ただ、あの玉虫色の風景だけは、この言い訳の数々を分かってくれるのではないか、というような気がしている。