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オハラのガラスができるまで~光学ガラス・レンズ編~

私たちの身の回りにはレンズ交換式カメラやプロジェクター、防犯カメラ、内視鏡など様々な光学ガラスがあります。美しく再現性の高い画像を撮影・投影するために、光学ガラスは必要不可欠な素材です。

そんな光学ガラスがどのように作られているのかご存じでしょうか。
今回のオハラ公式noteでは、光学ガラスの製造工程を「オハラのガラスができるまで」と称して紹介します。


オハラは光学ガラスのパイオニア

光学ガラスは窓ガラスや瓶ガラスに比べて、極めて高い透明度や均一な品質が求められます。そのため製造難度が非常に高く、日本では20世紀初頭までもっぱら輸入に頼ってきました。

オハラは日本初の光学ガラス専業メーカーとして1935年に創業し、以降89年(2024年現在)にわたり 国産光学ガラスのパイオニアとして光学業界の発展に寄与しています。

光学ガラスはガラス市場全体の販売比率が 1%という非常にニッチな分野です。どのような製造工程を経て完成するのか、見たことがある方は少ないかもしれません。

光学ガラスが完成するまでには、原料を混ぜ、熱を入れて冷まし、形を整え性能を調整、厳格な検査を実施するなど、多くの工程が必要になります。高い性能をどのように実現しているのか、レンズとして使用される光学ガラスの製造工程をご覧ください 。

オハラのガラスができるまで

①原料計量

光学ガラスの製造は、粉状の原料を混ぜる工程から始まります。光学ガラスの主な原料は、ケイ石、ランタン、ニオブなど。

オハラで使用する原料は80種類以上。ガラスの種類に応じたレシピがあり、少なくても5種類、最大で15種類の原料を使って光学ガラスを作ります。

レシピ通りに原料を計量しないと、求める性能のガラスは作れません。正確性が必要な工程になります。

②原料調合

計量 した原料はV型のミキサーで混ぜ合わせて均一にします。時間は4分から10分くらいで、ガラスの種類によって異なります。

1回につき、最大1,300kgの原料を混ぜ合わせることが可能です。不思議な形状をした機械ですが、V型になっていることで原料粉体がよく混ざります 。

異なる特性を持つガラスを作る時や 一日の終わりには洗浄を行い、原料が混入しないようにしています。

調合された原料は大きな袋や非鉄金属製の箱に入れられ、次の工程へと運ばれます。

③一次熔解・キャスト

混ぜ合わせた原料は1,000度以上の高温で約1日かけて熔かし、融液状態のガラス(熔融ガラス)にします。この熔かす工程を「熔解(ようかい)」と言います。

熔融ガラスをお盆状の台に流し出し、冷却することでガラスとなります。大型のフォークリフトでガラスの入った坩堝(るつぼ)をつかみ、高温のガラスを流し出す作業は「キャスト」と呼ばれ、とても迫力があります。

④破砕

冷却後のガラスは、人の手や破砕機で砕きます。

砕いたガラスは「カレット」と呼ばれ、2回目の熔解を行う際の材料になります。「せっかくガラスになったのに…… !」と思われるかもしれませんが、とても重要な工程です。

⑤カレット調合

オハラでは2回ガラスを熔かす工程を行うことで、屈折率などの性能を細かく調整しています。

1種類の光学ガラスを作るために、屈折率の異なる2種類以上のカレットを調合し、2回目の熔解でガラスの屈折率を高精度に制御します。

⑥二次熔解

組みあわせたカレットは、2回目の熔解へ。

炉の中で熔けたガラスは長いトンネルを通り、割れないようにゆっくり冷やされ、板状に成形されます。成形されるまでの工程 で温度条件を変更しながら、ガラス内部に含まれる気泡・異物を除去します。

ガラスの表面のオレンジ色は数十メートル先の炉の灯り。光学ガラスの透明度の高さが分かります。

⑦切断

板状になったガラスは一定の長さで切断され、製品になるために次の工程に進みます。

薄いガラスは機械で切断することができますが、厚いガラスは機械ではきれいに切ることができず、人の手による作業が必要です。

写真は検査用のガラスを切断しているところで、この美しい断面は長年の経験とすぐれた技巧の証です。

⑧硝材検査

ガラスの内部がよく見えるよう切断面を綺麗に磨き、様々な検査機を用いて、ゆがみや気泡がないか検査します。

光学ガラスは、熔解中の微妙な変化によって、性能や品質が変化してしまうことがあります。そのために、一定の長さごとに詳細な検査を行っています。

オハラでは検査員認定制度を導入しており、経験を積んだ検査員の眼はどんな小さな差異も見逃しません。

⑨成形

検査を通過したガラスは、サイコロ状に切断された後、熱と強い圧力で加工する「プレス機」を用いてレンズに近い形状へ加工されます。

⑩アニール

ガラスに熱を加え、性能を調整したり歪みをなくしたりする工程をアニールと言います。ガラスを電熱炉に入れ、熔けない程度に温度を上げてからゆっくり下げていきます。

温度の下げ方によって、屈折率などの細かい調整を行います。見た目の変化はありませんが、高い品質の光学ガラスを提供するための重要な工程です。長いものだと1カ月以上の時間を要するものもあります。

オハラの光学ガラスには様々な供給形態があります。アニールまで行った状態で出荷するものもあり、お客さまの要望にあわせて様々な形のガラスを提供しています。

⑪加工・研磨

アニールで内部の品質を高めたあとは、 研削・研磨の工程です。

高速研削機で曲面や厚みといった形状を整え、研磨で表面を磨きます 。プレス加工後、研磨前のガラスは表面が粗いため白くにごっていますが、精密に研磨することで透明で光を透過するようになります。

研磨を経て、初めてレンズと呼べる製品になります。

⑫洗浄

研磨の工程で使用した研磨剤や不純物を洗い流すために、レンズの洗浄を行います。種類によって洗浄液を変える工夫がされています。

最後にレンズを綺麗に洗浄し、より光を透過するように表面にコーティングをすることで、レンズが完成します。

⑬検査

製品出荷前に最終検査を行います。レンズの種類によって検査内容が異なります。

キズや泡、ガラスのくもりがないかなど、光を通して肉眼で確認し、マイクロスコープで細かくチェックをします。

たくさんの検査項目を経てようやく、お客さまに届けられます。

おわりに

高い性能が求められる光学ガラスは、完成するまでにたくさんの工程があり、厳しい水準のもと製造を行っています。完成したレンズは、美しい画像を撮影するための最も重要なパーツとして、レンズ交換式カメラなどに組み込まれています。

光学ガラスの製造工程を初めてご覧になった方も多いと思います。様々な工程や人の手を経て完成した光学ガラス。もしかしたら、ご覧いただいている皆さんの身近にもオハラのガラスがあるかもしれません。

これからも私たちオハラは、ガラスという素材を通し、みなさんの生活をより豊かにすることで社会に貢献してまいります。

※当記事の情報は2024年10月24日時点のものです。

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