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評価制度と等級制度、何をどう連動すべき?

人事領域を学び始めた頃。

「等級制度と評価制度は連動させましょう」と多くの書籍で書かれているのを目にしました。

「なるほど、連動が大事なんだ!」と最初は納得していたものの、徐々に実践を積み始めると「そもそも連動ってなんだ?」と疑問に思うことがしばしば。

しかし、書籍を読み返してみても、詳しい説明はなく、場合によっては「あとは各社の事情によります」とまとめられていることも…

これでは、手がかりを見つけるのも難しいものです。

いったい、等級制度と評価制度は何をどう連動させるのが望ましいのでしょうか?


等級制度と評価制度の関係性


この疑問に答えるためには、まず「等級制度」と「評価制度」の基本的な目的を理解することが重要です。

等級制度は、従業員をその能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇などの根拠となる制度です*1。

言い換えれば、個々の社員がどの段階にいるのかを明確にし、成長の指標として活用されます。

一方で、評価制度は一定期間の従業員の行動や成果を評価する仕組みを定めた制度です*2。この評価が、報酬や昇進・昇格、キャリアの方向性に影響を与えます。

すなわち、ある側面では、等級制度が「何を期待するか(基準)」を示し、評価制度が「どの程度達成できているか(実績)」を測る役割を果たします。

これらの制度が「連動」するというのは、単に同じ指標を使うということではありません。

重要なのは、評価を通じて得られたフィードバックが社員の成長にどうつながり、それが等級の変動やキャリアアップにどう反映されるのか、という点です。

例えば、等級制度が設定する目標に対して、評価制度でのフィードバックがどのように寄与するのかを明確にすることは大事です。

評価が高ければその分、等級が上がる、という単純な仕組みではなく、評価が社員の成長や役割に対する理解を深める手助けとなり、それが等級の見直しやキャリアパスにどうつながるかを見定める必要があります。

この連動がうまく機能すれば、社員は自身の努力や成果がどのように評価されるのか、そしてその結果がどのように自分のキャリアに反映されるのかを明確に理解できるようになります。

その結果、モチベーションが高まり、組織全体の活性化にもつながります。


連動のポイント①:評価が等級の要件とリンクしているか


評価制度で測定される指標が、等級ごとに求められる役割やスキルセットと一致していることは非常に重要です。

これが不明確だと、社員は「何をすれば次の等級に上がれるのか」がわからず、成長意欲を損なう可能性があります。

また、評価基準が役割に応じた適切な内容でなければ、社員が期待される成果を達成するために必要な行動を取ることができません。

例えば、マネージャー等級の要件として「組織の意思決定への貢献」が求められる場合、評価制度にもそれを反映させるべきです。

一方で、マネージャー等級において「個人のタスク遂行能力」が評価の主軸になっていると、社員は「マネジメントよりも個人業務を頑張ったほうが評価される」と誤解し、育成や意思決定の役割を後回しにしてしまう恐れがあります。

その結果、個人の業績にばかり焦点が当たり、組織全体の成長やチームワークの強化が後回しにされることとなり、組織としての持続的な発展が鈍化してしまうでしょう。

このように、明確な評価基準と指標を設定し、役割にふさわしいスキルや行動が正しく評価されるようにすることが、組織の発展に欠かせません。


連動のポイント②:評価結果が等級の変動に適切に反映されるか


評価の結果がどのように等級に反映されるのかを明確に定義することは、評価制度の透明性と公平性を保つために非常に重要です。

例えば、「高評価を2回連続で取れば昇格する」「過去半年間にわたり期待水準を満たさなければ降格の可能性がある」「月次評価で基準をクリアできなければ次回昇進審査の対象外となる」など、具体的で実行可能なルールを設計することで、従業員は評価が等級にどう影響を与えるかを正確に理解できます。

逆に、評価と等級が無関係に運用されてしまうと、評価が単なるフィードバックの仕組みに留まり、昇進やキャリア形成に繋がらなくなります。

例えば、評価が良くても昇進に結びつかない場合、社員は自分のキャリアアップが難しいと感じ、モチベーションを失う恐れがあります。最悪の場合、離職に繋がる可能性もありえます。

これを防ぐために、評価結果が等級やキャリアアップにどのように反映されるのか、具体的なルールと基準を設け、従業員が納得できる形で運用することが求められます。


連動のポイント③:評価の質的側面を等級の成長ストーリーに反映する


昇格や降格を決定する際、単に数値的な業績評価だけで判断するのではなく、質的な成長要素も重要な評価基準として組み込むことが必要です。業績や成果の数字だけでは測れない、社員のリーダーシップやチームへの貢献、組織文化への適応などの質的要素も、等級の変動に影響を与える仕組みを整えることが大切です。

例えば、定量的な業績評価に加えて、以下のような質的な評価項目を取り入れることで、社員の成長ストーリーをより多面的に評価できます。

リーダーシップの発揮
例:「プロジェクトをリードした経験」「部下の成長を促進した事例」「問題解決の際のリーダーシップ発揮」など。

チームへの貢献度
例:「チームの士気を高めた活動」「メンバーとの協力による成果達成」など。

組織文化への適応
例:「企業価値を体現した行動」「文化に合ったコミュニケーションスタイルの導入」など。

これらの質的な評価項目は、単なる数値だけでは測れない社員の成長や貢献を反映させることができ、より深い意味でのキャリアアップや成長を支援します。評価における質的な要素を重視することで、社員が成長に対するモチベーションを持ち続け、組織全体の文化やチームワークも向上します。

その結果、評価が等級の成長ストーリーに深く結びつき、昇進やキャリアの進展が単なる数値以上の価値を持つようになります。質的要素を取り入れた評価制度は、社員の多面的な成長を促進し、組織の持続的な発展に貢献するための重要な仕組みとなります。

ここまで等級制度と評価制度の連動について見てきました。

最後に等級制度と評価制度の連動を考える際に注意したいのは、単純な機械的ルールにしないことです。

「評価が高ければ自動的に昇格」「評価が低ければ即降格」といった制度にすると、組織の実態にそぐわないケースが出てきたり、短期的な成果ばかりを追求するような行動を助長してしまうこともあります。

あくまで等級制度と評価制度は、人材の適切な成長を促すためのもの。社員が納得感を持ちつつ、自身のキャリアを描けるような仕組みが求められます。

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