社内公募制度と社内FA制度、何が違う?
近年、自律的なキャリア形成を促すために導入する企業が増えています。
両者とも、社員が自分の意志で希望する職種や部署に移る手段ですが、仕組みそのものは違います。
何がどのように違うのでしょうか?
その制度を"誰が"主導するか――両者の違いは運用の主体
まず、両者の違いを確認してみましょう。
社内公募制度は、人材を補充したい部署が異動希望者を募り、そのポストに対して社員が応募できる制度です。いわば「求人型」の制度と言えるでしょう。
一方で社内FA制度は、社員が異動したい部署に自身を売り込む制度です。こちらは「求職型」の制度と言えます。
これら2つの制度の大きな違いは、「誰が主導するか」にあります。そのプロセスからも違いを見てみましょう。
社内公募制度は、人材を必要とする部署がそのポストに関する募集要項を社内に公開します。これら情報が公開されると、異動を望む社員は応募することができます。書類審査や面接などの審査を行われ、最終的に合格すれば社員はそのポストに就くことができるようになります。これらの一連のプロセスは人事が主導していきます。
他方で、社内FA制度は、あらかじめ決められた資格要件(たとえば、勤続年数や保有取得など)を満たす社員がFA権を取得するところから始まります。FA権を持つ社員は、自分の経歴や実績・保有資格などを、希望する部署にアピールします。希望する部署との適切なマッチングが成立すれば、その社員は異動することが実現します。この制度は、社員自身が主導で進めるための仕組みとなっています。
このように、社内公募制度は人事が主導となり運用されますが、社内FA制度は社員自身が主体となり働きかける必要があります。
意外に大変な制度運用。導入するには、慎重に投資対効果を見定める必要がある
さて、いずれの制度も、最終的な目的は、社員が自分自身のキャリアパスを形成し、自分自身で自己実現できる環境を提供することです。ただし、これらの制度を適切に運用するためには、留意すべきポイントがいくつか存在します。
まず、一つ目は「人間関係への影響」です。社員が制度を利用する際、上司に相談せずに利用したり、その人の異動によって他の同僚が穴埋めをすることで、周囲の不満が生じる可能性があります。これが結果的に人間関係に悪影響を及ぼすことがあるのです。
また、「全体最適視点の見落とし」も見逃せません。制度を通じて社員の希望を優先的に考慮するため、部署間での偏りが生じ、企業全体の全体最適な配置が難しくなることがあります。人事としても、評価や育成にかかわる計画に影響を及ぼす可能性があることにも留意が必要です。
さらに、「社員のモチベーション」も考慮すべき事項です。両制度とも希望が叶わなかった場合、社員のショックが大きいものです。最悪の場合、離職や休職につながる可能性もあるでしょう。このような事態を防ぐために、事前に制度の理解を促進し、期待値を調整することが重要です。
これらは両制度に共通する留意事項ですが、個別で見ても、それぞれの制度固有の難しさが存在します。
たとえば、社内公募制度には、人事部門に大きな負担がかかる可能性があります。社内公募は通常の採用プロセスと同様に、面接などの選考が行われ、採否が決定されます。さらに、応募した社員が異動することになった場合、その部署に新しい人材を補充する必要が生じます。このため、採用プロセス全体の運用と、異動に伴う新たな採用プロセスの両方を同時に進める必要があるのです。
一方で、社内FA制度の特有の難しさは、制度の設計に関する難易度です。すなわち、社員がFA権を取得するための条件を適切に設定する必要があるということです。勤続年数や実績、資格取得などの要件を設定することが必要ですが、これらの要件は部署や職種によって異なる場合があります。また、FA権を取得するためのハードルがあまりにも高すぎると、制度が効果的に機能しなくなる可能性があります。したがって、このバランスを上手く保つことが非常に重要です。
最終的に、これらの制度は会社と社員の双方に多くの利点をもたらすものですが、状況に応じて個別の調整も必要になってきます。これらの調整によって発生する労力も無視できません。こうした側面にも考慮しながら、投資対効果を検討することが重要です。
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