『リトル・ワンダーズ』16ミリのフィルムカメラを使いこなすには技術が必要だ
本作の映像表現は、レトロな世界観と、
雄大な自然を対比させながら、独特の雰囲気を醸し出している。
しかし、その表現には、意図的なのか否か、
いくつかの疑問が残る。
特に印象的なのは、雄大な山々や森といった自然描写だ。
深い緑と青を基調とした色彩は、
クレジットのフォントの色もグリーンで、
懐かしいAGFAフィルムのようなB/Gの発色を、
KODAKで反映させているのだろう。
しかし、これらの自然が、
ほとんどのシーンでピンボケ気味に描かれている点が特徴的である。
これは、
意図的に自然と人間の距離感を表現しようとしたのかもしれない。
あるいは、絵画の印象派のような雰囲気を出すための、
スタイリッシュな選択なのかもしれない。
しかし、
この表現は、
自然の奥深さや生命力といったものを十分に描き出せているとは言い難い。
むしろ、合成写真のように平面的な印象を与え、
自然の立体感や奥行きが失われているように感じられる。
16mmカメラによる撮影の質感にこだわり、
懐かしい雰囲気を出そうとしているのは理解できる。
しかし、16mmフィルムの選択は、
メリットだけでなく、デメリットも考慮する必要がある。
撮影時の光量、画質の粗さや、
レンズの選択肢の少なさなど(時間をかけて使用するカメラにあうレンズをテストする必要有)、16mmフィルムならではの制約がある。
これらの制約を理解し、
表現したいイメージに合わせて適切なレンズとカメラを選択することが重要だ。
本作では、
16mmフィルムの特性を最大限に活かしているのかどうかは、
不明だった。
特に、自然描写においては、
よりシャープな映像表現が求められたのではないか。
映像表現だけでなく、シナリオや演出においても、
焦点が定まっていない部分が見られる。
インプット肥大、
アウトプット下手の典型臭が強い。
特に、子供たちの冒険物語という大枠の中で、自然が果たす役割が曖昧である。自然は、単なる背景として描かれているのか、舞台が森である説得力があいまいだ。
ラスト5分は物語のクライマックスを効果的に表現していた。
しかし、全体的な映像表現の完成度という点では、
やや物足りなさを感じた。
子どもたちの必死さに、
星5つの観客は多いだろう、
だが、
パイを焼く、
卵を買う、
だけにシンプルに注力しておけば、
星5つの観客は5倍以上の人数になっていただろう。
「リトルランボーズ」とは違った。