『喪う』エンターテインメントを超えた芝居とは・・・
アザゼル・ジェイコブス監督による、
シンプルに言うと素晴らしいマジックショーだ。
種も仕掛けもない、
ただ役者たちが自分たちの身体一つで紡ぎ出す物語。
目鼻口、頬、額と眉骨、眉、手足、肩、全身で身体表現。
口頭、のど、腹で分けて発する言葉。
これらの要素を駆使し、
役者たちは観客を物語の世界へと鮮やかに誘い込む。
パトス(感情)を揺さぶり→レイチェル、
ロゴス(論理)で説得し→ケイティ、
クリスティーンは、エトス(品格、倫理、勇気)を巧みに操りながら、
キャッチボールを繰り返して、
エンジェルと対応,
エンパシーに近づいていく。
状況に応じて意識する体の場所を的確にコントロールしながら、
役者たちはまるで魔法使いのように観客の心を操る。
観客は3姉妹の、一長一短、
一長を理解し、一短に共感していく・・・
この一短に共感させていく技術がマジックショーのよう。
感情のコントロールと演技
本作のような芝居は、
感情をコントロールできる高い技術が不可欠だ。
感情に任せて演技することは、
時に取り返しのつかない状況をもたらす。
役者は、感情を理解し、コントロールし、
表現する高度な技術を身につける必要がある。
それは、メンタル面の訓練も要求される、ある種の職人技だ。
演技の重要性と教育
演技は、単なるエンターテイメントにとどまらない。
他人とコミュニケーションを取り、
理解し合うための重要なツールだ。
欧米では、医師や法曹等、国家試験が必要な職業と同様に、
役者も高度な専門知識と技術を必要とする職業と認識されている。
そのため、演技は小中の義務教育課程でカリキュラムに組まれている国が多く、
コミュニケーション能力を育むための基礎的な科目として位置づけられている。
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