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『動物界』使い古された物語のフォーマット

どこのどこの、
どこの誰から頼まれた♪

命をかける価値もない、
これほど汚れたニッポンの、
ひとの心が生み出したー・・♪

川内康範の、子供向け変身ヒーロー作品、
「正義のシンボル コンドールマン」を、
例に挙げるまでもなく、

本作は、
古今東西の、
ヴァンパイア、ゾンビ、
ビースト、モンスター、
DCEU、マーベルといった、
無数に存在する物語フォーマットに則っている。

同種のフォーマットであっても、

観客の記憶から速やかに消え去る作品と、
半世紀を経ても人々の心を捉え続ける作品が存在する。

それは何故か。

答えは、

VFXやアクションといった表層的な要素だけではなく、

シナリオ、演出、そして俳優の芝居といった、
いわゆる【平場】と呼ばれる部分の質の高低にあるとも言えるだろう。

本作は、派手なVFXや流行りのアクションに頼ることなく、
爪の下の爪、
子の毛を剃る父、
洗濯物の匂い等、

緻密に練られた脚本と、
卓越した演出によって、

観客の想像力を最大限に刺激する。

ポテチを食べるシークエンス、

森を疾走するシーン、

コンドルマン・・・
翼を持った友人と叫ぶシーン、
観客も一緒に叫びたくなるように、徐々にクレッシェンドさせていく演出は高度な技術である、
また、
その意図をシェアできている、
編集、音楽含めたポスプロチームとの共同作業も素晴らしい。

観客にそれぞれ異なる経験視界視点から物語を読み解き、
自分だけの解釈を生み出す余地を残す。

ある者は、
作品に現代社会における分断や疎外感、解放感を投影し、

ある者はファンタジー作品や文学作品との類似性を発見する。

また、
親子の絆や人間の普遍的な感情を深く掘り下げる者もいれば、
音楽や芸術作品との関連性を指摘する者もいるだろう。

父子の関係を通して、
観客を信頼し、彼ら(観客)の解釈の多様性を尊重する姿勢が際立っている。

それは、観客一人ひとりが作品の中に自分自身を見出し、
共感し、そして新たな発見をすることを可能にする。

父と子のラスト、ポテチも含めて、

観客に思考を促し、感情を揺さぶり、
そして人生観すら変える可能性も秘めている、

というのは言い過ぎだろうか。

【蛇足】
飛ぶ者の主観、見上げる仲間、
お互いマイノリティのカット、
は、
U2のアルバム「魂の叫び」
「All I Want Is You」のサーカス団を描いたMV、
を思い出した。

「百年の孤独」の世界観でもある。

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