『寺山修司展』蓮實重彦がひそかに憧れていたひと
世田谷文学館で開催中の「寺山修司展」は、
単なる回顧展を超え、寺山修司が織りなす、
生きた言葉、そして言葉に命を吹き込むための彼の情熱が、
会場全体を包み込むように、
寺山の手紙の数々に覆われていた。
その独特の文字と文体は、
彼自身の分身のように、
会場に躍動感を与えていた。
まるで、寺山が今目の前のここで筆を執り、
私たちに語りかけているような錯覚すら覚えた。
天井桟敷関連約100点、
約40通もの書簡を一度に目にする機会はそうないだろう。
その一つ一つに込められた想いや、
言葉に対する彼の並々ならぬ情熱を、
改めて感じることができた。
青森県三沢市のすばらしい寺山修司記念館から、
手紙だけ抜き出したような印象だった。
横では追悼、菅野昭正名誉館長。
「第三の男」が上映されていた。
蓮實重彦氏がひそかに憧れていたという仏文学者、
映画に関しての批評も普遍的な真理を探求する糸口が、
細かく分厚く散りばめられている。
「存在の耐えられない軽さ」
「誰がために鐘は鳴る」
時代に翻弄される個人は、
シビル・ウォーのように、
「異邦人」の批評は、
公開中の「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」を解釈する考え方の補助線にもなるだろう。
「時計じかけのオレンジ」では、
国家の暴走と子供たちの暴力、
どっちが危険?
とシンプルに問う。
「ベニスに死す」「薔薇の名前」も上映するそうだ。