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『美食家ダリのレストラン』美しいカダケスの街

鑑賞前、
私は常に作品に対する予備知識を最小限に留め、
純粋な体験を求めるように心がけている。

ケン・ローチの「大地と自由」を彷彿とさせるオープニングには、
意表を突かれた。

物語の時代設定はフランコ政権下のスペイン!
えー!50年前・・・

抑圧的な政治体制が色濃く反映されているのはセリフだけで、
そのあたりの全体的なちぐはぐさが最後まで尾を引く。

フィゲラス、カダケス、ポルトリガト、
この春、実際にこれらの地を訪れた私にとって、
本作のロケーション撮影は、単なる映像以上の意味を持っていた。

ポルトリガトのダリ邸宅は、
玄関や脇の階段など細部に至るまで精巧に再現されていた。

現在、邸宅は小さな博物館として一般公開されているが、
映画の撮影ではおそらく異なる場所にオープンセットを組んで再現されたのであろう。

カダケスの街並みを捉えた白い家々のロングショットは、
言うまでもなく美しかった。

ダリと親交のあったブニュエルもこの街を何度も訪れたという。

引きの絵にもあった街の中央に位置する大きな教会の鐘の音を思い出した。

作品全体としては、
ダリのファンであれば辛うじて許容できるかどうかの境界線のような内容だった。
レストランの数々のプロップ、飾り物等々で満足、
あるいは、
原題は「Esperando a Dali」
「ダリを夢見て」
これで、
muy bien となるか・・・

特に、ダリのミューズでもあったガラがこの映画を観たならば、
おそらく幾つかのシーンには厳しい評価を下したであろう。

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