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「首を傾げる」ことが疑問を表すとは限らない世界

ネパール出身の学生が授業内の活動のことで私に指示を仰ぎに来たので、
これをしてください、できたら次はこれをしてください、と説明したところ、
その学生はじっと私の目を見たまま首を振った。

通じなかったか、と思いもう一度かみ砕いて説明を始めると、
その学生は「いいえもうわかりました、大丈夫です」と説明を遮って止め、席へ戻っていった。

というようなことが別の場面で何度か起きたことで、
「どうやらネパールでは首を傾げることが肯定を表しているらしい」ということにじわじわと気が付き始めた。

少し調べてみると、以下のページに似たことが書いてあった。

この記事を書いているのは、日本企業に外国人材を紹介する事業を行っている会社らしい。
その人材の母国や母文化まで紹介してくれるなんて、手厚いサポート。

ネパール出身の人たちにこの情報を確かめてみると、あまりピンと来ていない様子だった。自覚してはいないのかもしれない。

しかしもう一つネパールのジェスチャーを教えてくれた。

例えば男性が道を歩いていて、間違って道行く女性に自分の足がぶつかってしまったとき、
ネパールではお決まりのジェスチャーがあるらしい。

イメージとしては神父さんが十字を切るときのような感じで、右手の親指人差し指中指を、何かをつまむような形でひとまとめにして、
でも十字は切らずにその指先をおでこから胸のあたりまでスッスッと2往復ほどする。


この画像で言うと、③と④がないバージョンの動き

この動作は神様に謝るという意味があるそうで、ぶつかった本人に謝りなよという気もするが、そういうものではないのかもしれない。

男女が逆の場合、女の人の足が男の人にぶつかってしまったときも同じことをするの?と聞いてみると、その場のネパール出身の人たちにどっと笑いが起きた。
その場合はこのジェスチャーはしないらしい。
「女の人は強いので、ぶつかった男の人に『ちゃんと見て歩いてよ』と言って終わりです」と冗談を言う人もいた。

ジェスチャーに関する話は面白いものが多く、その場にいたネパール出身以外の人たちにもいろいろ聞いてみた。

例えばミャンマーでは目上の人の前では基本的に両腕を組むことが礼儀を示すことになるらしい。
日本ではどちらかというと逆に作用(偉そうに見える)してしまいそうだなと思ったら、もうそれはあるあるなので留学前に注意事項として、日本では目上の人の前で腕を組まない方がいいぞと聞いていたらしい。
これはミャンマー出身者にとっては初見殺しのトラップだ。

ほかにも、ベトナム出身者によると子どもたちが学校で勉強するときは机の上に両腕を置くのが普通だそうで、そのまま挙手して発言したりするらしい。
これも日本ではどちらかというと「手はお膝!」という教育方針に反しそうな気がするので、もしかしたらベトナムの学校から日本の学校へ転向した子がいたら不本意に怒られてしまうかもしれない。

日本でも例えば「おいで」の手と「あっち行け」が日本と欧米で反対らしいだとか、そのくらいの話は有名だけど、知られていないところで自分の意図に反した評価を得ていることは多そう。

ちなみに、その場にパキスタン出身の人もいたので、パキスタンのジェスチャーも教えてほしいと話を振ってみたら、
「パキスタンでは、kidnapされたとき…」と誘拐されたとき専用のハンドサイン(助けて!という意味らしい)だけ教えてくれた。
あまりにも突然ジェスチャーの毛色が変わったので、状況は全く笑い事ではないけど思わず笑ってしまった。

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