
②ニーズの理解:メーカーの商品企画のための「売れる商品コンセプトの作り方」
皆さん、こんにちは。このシリーズでは、商品企画初心者に向けて「売れる商品コンセプトの作り方」を説明していこうと思います。
僕は、2005年から、食品メーカーの商品開発部門やマーケティング部門で数多くの商品企画に携わってきました。また、マーケターとして多くのメンバーの育成に取り組んできました。その経験から感じたことは、新商品企画は事業の根幹を支える仕事であるにもかかわらず、多くの場合、メンバー個人の発想とスキルに依存しているということです。
経験上、商品企画のスキルUPには時間がかかります。このシリーズでは、僕が社内セミナーでメンバーに伝えている理論と考え方をできるだけシンプルにまとめてみます。商品企画初心者や、メンバーを育成されている上司の方々に、少しでも参考になれば幸いです。よろしくお願いします。
ニーズの重要性
お客様が商品を購入する動機がニーズです。ニーズとはどんなものなのか、なぜニーズが発生するのか、どうやってニーズを満たすのか、この仕組みをしっかり理解しておくことが大切です。
ニーズをとらえる
この絵を見てください。この人のニーズは何だと思いますか?この吹き出しに、この人のニーズが入るなら何でしょう。考えてみてください。
「水がほしい」ではありません。
水は「ウォンツ」と言います。ではニーズは何でしょうか?
答えは「喉の渇きを癒したい」です。そのニーズを満たすために欲しいと思うものをウォンツと言い、この場合は「水」がウォンツです。
ニーズとは「現状」と「理想」のギャップを埋めたいと思う気持ちのことです。この絵の場合は、「喉がカラカラに乾いている」という現状と「喉の渇きが癒されている」という理想的な状態があり、そのギャップを埋めたい気持ち「喉の渇きを癒したい」がニーズとなります。
このようにニーズは「現状」と「理想」のギャップがある時に発生します。逆に言うと、ギャップの無いところにはニーズはありません。満たされている状態ではニーズは生まれません。ニーズを見つけるために、不満、不安、不足、不便、不自由などの「ふの字」を探すことは、このギャップを見つけることに他なりません。
ニーズはどこにあるのか
売れる商品コンセプトを作るためには、お客様のニーズを見つけることが必要です。上に書いたように「ふの字」を探すことが有効です。ここで、一番重要なことはニーズはお客様の頭の中にあるということです。ニーズを探すとき、お客様の頭の中を探さなくてはいけません。そこに「現状」と「理想」があって初めて、ニーズが生まれるんです。
お客様自身は、不満、不便などの「ふの字」を意識していない時がほとんどです。そんなときは、あえてお客様に「理想の状態」を伝えることで、「現状」の不満や不便に気づいてもらうということもあります。「現状」よりも良い「理想の状態」があるということに気が付くと、そのギャップを埋めたいというニーズが生まれます。
除菌のCMなどがそうですよね。空間や身の回りに実は菌がたくさんいるという「現実」をCGなどで見せることで、それを無くすという「理想」が意識され、「菌を無くしたい」というニーズが生まれます。
ベネフィットをとらえる
ニーズを満たすために欲しいと思うものがウォンツです。そのウォンツによって得られる便益をベネフィットと言います。「喉の渇きを癒したい」というニーズに対し、「水」というウォンツによって「喉の渇きを癒せる」というベネフィットを得ることができます。
ニーズは「~したい」と表し、ベネフィットは「~できる」と表します。お客様の欲求がニーズ、商品がウォンツ、商品がお客様に提供するのがベネフィットです。
ひとは、なぜ商品を買うのか
ひとは、ニーズを満たすために商品を買います。言い換えれば、ベネフィットを得るために商品を買うということになります。つまり、商品にお金を払っているのではなく、商品が提供してくれるベネフィットにお金を払っているというのが実態なんです。これは、意識をしないとなかなか実感できません。しかし、自分自身の日々の購買行動を深く考えてみてください。行動としては、商品にお金を払って購入しているように見えますが、実際にはその商品のベネフィットを得るためにお金を払っているということに気づくと思います。
商品とは何か
商品とはウォンツです。お客様の「現状」と「理想」のギャップを埋められるベネフィットを持っていれば、お客様はそのベネフィットにお金を払い、商品を購入してくれます。お客様のニーズを満たすベネフィットを提供できる商品が、売れる商品です。
言い換えれば、商品とは手段でしかなく、その目的は、お客様のニーズを満たすこと、つまりお客様の「現状」と「理想」のギャップを埋めることのできるベネフィットを提供すること、になります。
まとめ
少しややこしい話になってしまいましたが、このような見方ができるようになると、商品が売れる理由を正しく理解することができ、売れる商品コンセプト作りに役立ちます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。