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書籍【グレート・リセット~ダボス会議で語られるアフターコロナの世界~】読了

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◎タイトル:グレート・リセット~ダボス会議で語られるアフターコロナの世界~
◎著者:クラウス・シュワブ、ティエリ・マルレ、藤田正美(訳)
◎出版社:日経ナショナル ジオグラフィック


世界は大きく変化している。そのことを理解することが大切だと説くが、認識することは相当難しいと感じる。
順応性が高いというポジティブな側面もあると思うが、実は人々は案外疎いという側面もあると思う。
連続した時間軸の中で生きていると、「きちんと立ち止まってじっくり考える」という行為が疎かにされがちだ。
忙しい現代では、特にそういう時間を設けるのは難しい。
物理的な暇があったとしても、スマホからのお知らせに追いまくられ、ついついその対応だけで時間を浪費してしまう。
考える時間を確保することが、これからの生き方では特に重要になると思うのだ。
その積み重ねの「思考の質」が、人生において大きな差になっていくことは間違いないだろう。本書では社会の変化について語るだけに留まらず、その上で「個人の考え方をリセットせよ」と更なる進化を促している。
これだけ今までの常識が覆る社会になっているのだから、個人の考え方そのものもリセットさせる必要性があるのは、頭では理解できる。
しかし思考こそ、自らの意思でリセットさせるのは容易ではない。
過去の自分を否定することに繋がるし、どうしても本能として現状維持バイアスが作動してしまうからだ。
最近では「メタ認知の必要性」が取り沙汰されているが、どれだけ自己を客観視できるか。
そういう意味では、社会の流れについても、きちんと客観視せよということか。
本書内で記載されているが、21世紀のキーワードとしては、「相互依存」「スピード」「複雑性」なのだそうだ。
確かにこれらは、20世紀と明らかに異なる事象だ。
私自身、昭和から平成そして令和という連続した時間軸の中に生きているために、過去と現在そして未来がどのように変化しているのかを、相当に意識しなければ感じ取ることそのものが難しい。
図らずもコロナ禍を経て、大きな社会変化を体験したはずなのに、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というのも人間の特性なのかもしれない。
だからこそ改めて立ち止まって見直して、考察することに意味がある。
未来を考える上で、今後の変化について思いを馳せてみる。
難しいことであるが、大切なことだと思う。
グローバル化によって世界は身近になり、各国とも簡単に相互の往来が可能となってしまった。
人の往来に関わらず、社会課題すらも往来することで、益々各国同士の相互依存は高まっていると言える。
一つの課題が自国で完結することはほとんどない。
一国の課題が、あらゆる国々に波及して問題を大きくしてしまう。
コロナウイルスの感染症はその最たる例であるが、気候変動の問題、国際紛争の問題、食料危機の問題、資源の問題などは一国の状況が世界に大きな影響を与えているのは間違いない。
最早我々は自国だけで完結して生きていくことは出来ない状況にあるのだ。
当然ある国の経済が大きなダメージを受ければ、少なからず世界中に影響を及ぼしてしまう状況にある。
そして当然インターネットからスマホへの進化によって、情報伝達のスピードは瞬時になってしまった。
社会の問題すら瞬時に世界中を駆け巡り、人々を翻弄させてしまう。
こんな複雑化した社会の中で生きる我々は、事前に対策を立てて対応することは不可能に近い。
人間が考えるレベルの、理解を超えた事象が起こってしまっている以上、我々がどうすべきかは本当に真剣に考えなくてはいけない。
目の前の対処療法ではなく、社会を根本から治療する方法。
それがまさに「グレートリセット」であると、著者は訴えている。
地球が自然の摂理で今の社会を作り上げたとは到底思えない。
この複雑化した社会を作り上げたのは、間違いなく我々人間たちである。
それであれば、せめて自分たちでリセットすることは、不可能な話ではないような気がしている。
現にコロナ禍によって、社会の仕組みはほんの一部かもしれないが、リセットされたのは間違いないからだ。
本書では資本主義そのものを見直したり、貨幣制度について見直したり、国連含めた国家についても見直したりという壮大な話も展開されている。
しかしながら、結局個人個人の思考そのものをリセットしなければ意味がないことも、本書では示されている。
まさにその通りだと思うのだが、我々は何を目指してどんな未来社会を生きたいのか。
自分自身がどうやって生きていきたいのか。
自分の人生の本当の幸福とは何なのか。
突き詰めて考え直せと、著者は我々に問いかける。
個人の思考のグレートリセット。
1人1人が考え直すことで、世界を変えることに繋がるのだろう。
動物の本能は所詮変わらない、と思ってしまう一方で、人間自身が変化している萌芽についても、手応えを感じているのは間違いない。
誰だって社会が良い方向に向かってほしいと願っている。
複雑性が増している社会だからこそ、個人の思考はシンプルでいたい。
「自分にとって本当の幸せとは何なのだろう」
こんな単純なことを考えるだけでいいのかもしれない。
社会のグレートリセットは本当に起こるかもしれない。
そんな時に、慌てないで冷静にいられるようにしたいものである。
結局、どんな人生を過ごすかが、自分にとって一番大事なのだということか。
改めて自分自身の思考のグレートリセットを試みる時が来たのかもしれない。
そんな時代に我々は生きているということなのだ。
(2024/6/6木)


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