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水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

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皆さんには水の声は聞こえるだろうか? 水の声は私を遥かに速い泳ぎへと導いてくれました。 そして、その水の声が私の人生を大きく変えたこと。 不思議な体験をさせてもらった事。 今まで…
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2021年7月の記事一覧

【休憩 番外編】水の声 私からのメッセージ

皆さんこんにちわ。いつも僕が書いた水の声を読んでくださって、本当にありがとうございます。 さて、物語も中間点に達しました。ここからの後半は意外な展開になります。夢に出てきた坂本久美子という存在。そして、坂本久美子そっくりな自分の泳ぎはいったい何なのか?鈴木龍平との闘いは行われるのか? そして、マドンナ的存在の新木めぐみとの関係は...? 乞うご期待!なんですが、その前に、この物語が出来たきっけを皆さんに知ってもらいたいと思います。 ここNOTEにも素晴らしい著者の皆さ

【No.12】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

スタート台に立った俺は周りのひそひそ話や茂野どもの嫌味な声援、競技の事などそっちのけで中田の姿を探した。 中田が来ているのかどうかわからないほどの人の数。 来ているのか? 来ているのなら手でも振ってくれ。 何処だ? 俺の泳ぎだけでも見たいって・・・中田、来てるよな? 『よ~い…』 ピストルを鳴らす教師が声を張り上げた。 他のやつらは前かがみになって飛び込む用意になったが、俺はその声が聞こえなかった。 それほど親友の中田を探していた。 『…小川?』 その教師が俺にいう。

【No.13】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

全員の泳ぎが終わり、それぞれの種目に入った。 リレーになるまでしばらく時間があった。 新木も泳ぎ終わり、彼女もその番ではトップだった。 流石は水泳を得意としていただけある。 しばらくして、だっこしていた近所の子供が帰って、俺はまた一人孤独になっていた。 別にいつものようになっただけ。 周りは声援で必死。俺はそこに打ち解けないだけ。 夏の日差しは容赦なく照りつけた。 暑さが突き刺さるような真っ青な空を見ては雲の大きさに思いをはせ、その先にあるものを探すような、そんな暇な時

【No.14】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 リレー編 第二次ベビーブームの俺達は7クラスにもなった。 今の少子化では考えられないほどのクラス数。 リレーの選手はそのほとんどが水泳部員。 水泳部員ではないのは俺を含めて5人しかいなかった。 でも、俺はこの場でもある意味で出る杭は打つ的な態度で皆から無視同然でいた。 違う意味では皆から恐れられた存在でもあった。 そして、鈴木の存在も同じようなものだった。 皆、鈴木に勝つことを考えていたのだろうか? 鈴木は軽い準備運動をしていた。 テントの中でリレーの

【No.15】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 (坂本久美子 後編) 俺は全力を尽くし、そしてゴールした。 その時の俺にとっては、順位など関係ない。 俺は、水の声が指示したように、すぐに水中に潜った。 次の瞬間だった。 時間はどれくらいだったのだろう…? 一瞬…いや、それ以上に長く感じた。 だが、それがどのくらいの時間だったかは定かではない。 さっき水に飛び込んだ時の彼女の幻覚のようなものが頭の中に入ってきた。 小学低学年位の少女がプールで泳いでいる。 しかし、その目線の先には高校生くらいの女の子が泳

【No.16】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

校内水泳大会 (決勝編) 俺は最後の7コース目だった。 この7人が選ばれたときの順位は秒数が早かった順位7人。 だからといって俺が7番目というわけではない。 くじ引きのような感じで7コース目で俺は泳ぐ事になった。 ある意味では最悪の場所である。 一番端なので、声援がうるさくて水の声が聞こえずらい場所だった。 しかも、隣の6コースは大嫌いな小松…。 全くもってついていない…。 不安になりながらも俺達7人はスタート台に立った。 最後の競技という事もあり、プールは大盛り上がりで

【No.17】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

50メートルターンを終えた辺りから異変に気づく。 他のコースに腰から下の足だけが見えるのだ。 泳ぎ疲れたわけではなかった。 その選手達は自分たちの事をそっちのけで俺と鈴木の一騎打ちを見ていたのだ。 息継ぎの時に見えた上半身の姿は、俺と鈴木を応援している姿だった。 そして、それまで以上に怒涛のような声援が聞こえだしてきた。 鈴木は俺の前か? 後ろか?  意外にも俺は鈴木を意識し始めていた。 俺のこの時からの泳ぎには水の声は聞こえていない。 そうだ。彼女もまた、この一騎打ちを見

【No.18】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

告白 次の瞬間、クラスメートが俺を迎えてくれた。 一際物凄い勢いで、それは訳がわからないほどだった。 その中に中田もいた。 久しぶりに見る中田の笑顔。 中田も笑顔だったが少し泣いているようにも見えた。 俺はこの時はじめて胴上げというものをされた。 空中に浮く感じの、かなりおっかなかった胴上げ。 その後に拍手が巻き起こり、中田や他の連中たちと抱き合い、喜びを共にしていた。 俺はクラスメートからクラスの一員として初めて認められたような感じだった。 新木が俺の目の前にきた。

【No.19】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語

新木は新しく買ったばかりのような、それこそお嬢様の服装で座っていた。 新木の前に立っても、俺の姿に気が付いていなかった。 時折、その真新しいピンクのスカートに涙を落としていた。 俺は声がかけられなかった。 しばらくその場に立っているのがやっとだった。 マスターが新木にハンカチを持ってきてくれた。 『安物だけど、使ってね』 その言葉で、俺に気が付いた。 新木『…んね…ごめんね』 泣きながら彼女は必死に何かを伝えようとしていた。 その姿から、俺は何も言葉が出なかった。 俺『

【最終回】水の声 水泳部員をぶっち抜く帰宅部員の奇跡の物語【拡大版】

2008年 7月(最終章) 2008年7月。 俺が水泳から身を引いてから実に20年が経過しようとしていた。 7月21日 この日の新聞記事の地方版にある人が亡くなったことが記載されていた。 その人とは『清水永吉』。 そう。清水式泳法を編み出し、坂本久美子に教えたあの清水のオッサンの訃報の記事だった。 水泳に身を置いてオリンピックの選手を輩出したオッサンの記事が載せられていたが、そこに坂本久美子の文字はなかった。 水泳の普及活動の事が多く書いてあった。 記事を読み終えるなり、