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とびきりきれいな中古のアンソロジー詩集

アンソロジー詩集をネットで注文してきのう届いたのですが、27年前刊行のものなのに新刊並みのきれいさでした。
ありえないほどきれいです。

そこでハッと思いました。
「あの方が所蔵されていたのかもしれない」
その古書店から100kmあまり離れた、北の街出身の詩人の方を弾かれるように思い出しました。
そして、検索してみました。
2年前に逝去されていました。

その方はアンソロジーには出ていませんが、当時本が寄贈されたことは知っています。同人と懇意でもありました。ただ、だいぶ前のことですので、この本が彼の蔵書だったかもしれないと突飛な発想ができるのは私だけかもしれません。

その方に雑誌のエッセイを依頼したことがありました。
エッセイには幼い頃に故郷の北の街で空襲にあった話が出ていました。私の父も同郷で、同じ空襲に幼い頃遭っていたので後でその話をしてみました。
するとその方は、「あの空襲で僕かあなたのお父さんが犠牲になっていたら、僕とあなたがこんな風に話していることもなかったですね」としみじみとおっしゃっていました。

その方は東京近辺にお住まいだったかと思いますが、お子さんやお孫さんは北の街にいらっしゃるようです。私は何かスルスルと繋がっていくような気がしました。

真実は藪の中ですし、これ以上調べなくてもいいかなと思っています。

私は古書店がどこにあるかも知らずに買いましたので、本当に不思議な気持ちがしています。
自分の詩がいくつか出ているのをパラパラと見て、「若気の至りかなあ」と思ってまたしまいました。

ああ、でも本当に酔っぱらって妙なテンションの人がいたのです。新宿の片隅の大ガード手前のドキュメンタリーのような詩。ほとんど街中で書いていて。
私はいつもたずね人を探していて、気が急いていました。でも見つかるのはちょっと違う人で、なおさら気が急いて途方に暮れていました。
今は探したりはしていません。
そういう人は
来てくれると信じているから。

この本を見ると思い出す風景があります。
自分の詩を見ると流れてくる音楽もあります。
そして、しみじみと話をされていた詩人の方のことを思い出すことまでできたのでした。
それはまるで彼からのメッセージのようにも思えます。
「書いていますか」

1冊の非常にきれいな中古本にまつわるお話でした。

尾方佐羽

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