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これからの飲食店の未来と、それでもお店に行きたくなる意味づくり

ちょっと前に気になるフードビジネスのニュースを見かけた。NYのデザインスタジオが花屋を併設したレストランをOPENしたというニュースだ。

デザインスタジオが店舗を経営することは、現在では別にそう珍しいことでもない。ものづくりの先端に関わっていれば審美眼は鍛えられるし、なにより自身が開発した商品を卸すのではなく直売したいと思うのは自然な流れだろう。

最近だとファッションブランドのミナ・ペルホネンの皆川さんが表参道のスパイラルにCallというカフェと雑貨のお店を作ったけれど、美学や美意識の体現と伝道の場として非常にクオリティの高い店舗だし、内装デザインも丁寧でとてもいい仕事をしていて思わず嫉妬させられた。

でも、上述のNYのレストラン併設ショップのGuild で面白いのは雑貨の取り扱いだけでなく、レストランで使われている食器やテーブルや椅子などの店内全てのものが購入可能な体験型ショールーミングスペースだという事だ。

自分も吉祥寺のお店では近いことをやろうと計画中なので、トレンドの先端でもあるNYでもこういう取り組みがされていて驚いた。

まさしく、このそこでしか出会えない一点物の総合力を持つことがこれからの飲食店の一つの回答だと思う。


世界トップクラスの東京の飲食シーンと、飲食業界の廃業率

さて、あなたは最近いつ外食をしただろうか?上述のAMPの記事では、ニューヨークでの飲食業界の現状をこう書いている。

レストランに足を運ぶという体験も陰りを見せ始めている。フードデリバリーサービスの盛り上がりを背景に、店舗を持たないゴーストレスランが登場。レストランも実店舗を持つことの意味を問い直されている。外食を選ぶのにも理由が必要だ。空間を楽しめないのであれば、別にデリバリーでいい。顧客の店舗の空間や体験を楽しみたいという欲求は強くなっていくのではないだろうか。

ひるがえって、現在の東京は飲食のレベルでいえば世界トップクラスの密度と選択肢の広さを持っている。しかし、全業種を見渡しても参入しやすく倒産件数や退店件数が多いのも飲食業だ。

ある調査では全業種の廃業率平均が10%程度なのに対して、飲食・宿泊業は20%近い廃業率でダントツのトップだった。

実際、僕もカフェをやりたいというオーナーさんに依頼を受けたときに、その事業計画ではほとんど儲からないから計画を見直しましょうと提言する事が何度もある。

おまけにUverEatsをはじめ、宅食のネットワークやシステムはどんどん発展するだろう。少子高齢化で人が減れば箱は余るので、余った箱で常設店舗を持たないゴーストレストランのような営業形態も増えるだろうし、不動産という動かせない場所を持つリスクは高まるばかりだ。

さらにこれからは経済の縮小がほぼ確実と言われている。この厳しい状況の中で、これからの飲食店はどういう生き残り戦略をとるべきなのだろう?


それでもお店に行きたくなる意味づくり

これからの飲食店はどうあるべきなのだろうか?

便利になれきって、無限の情報と選択肢の海の中にいる消費者に、わざわざ出向いてそれでも食べたいと思わせなければいけない。

質の高い料理とサービスにシズル感を煽る演出は当然として、参加する余地を作ったり、そこにしかない&そこでしか買えないものを用意したり(もちろんネット通販もしない)一点物の総合力が求められていくハズだ。

現状の流行である居抜きで安く出店するというモデルは、利便性とコスパで宅食などにいずれ追い抜かれるだろう。コスト的に内装デザインを諦めて中途半端に出店するのであれば、腕に自信があるならゴーストレストランとしての営業を選ぶオーナーも増えるはずだ。

そうなれば、僕たち店舗デザイナーの仕事は今以上の総合力と提案力が求められてくる。

全ての業界で中途半端なポジションは淘汰されて、強い個性を持つ者だけが生き残る世界がくる。僕の業界も、僕のクライアントさんのいる飲食業界や小売業界も、そしてあなたのいる業界もだ。

時代の波に乗るために、何ができるのかを考えて準備しなければいけない。

手始めに、僕たちは吉祥寺のお店を美学=価値観を伝え・売るための場所にしようと準備している。少し計画が遅れているけれど、その話も今度じっくり伝えたい。


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