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『スポットワークは働き手「31.4万人」分の力を生み出している』を読んで考えたこと
こんにちは
イデアレコードの左川です。
外食業界では人手不足が深刻な状況が依然として続き、スポットワークに頼らざるを得なくなっている。忘年会シーズンという繁忙期に入っている今は多くのスポットワーカーが働いていることが想像される。そんな中、リクルートワークス研究所の『スポットワークは働き手「31.4万人」分の力を生み出している』の記事が気になって読んでみた。
まずは実施の有無について分析する(図表1)。この1年間でスポットワークを1度以上実施したことがある者の割合(実施率)は全就業者のうち8.2%であった。
また、その頻度についても聞いている。1年間で1回、1年間に2・3回実施した、という者がともに1.8%と最も多く、半年間に2・3回も1.3%と多い。頻度が上がるにつれて出現率が低下しており、1週間に4・5回以上実施しているという者は0.2%であった。
この実施率・実施状況については正規社員もほとんど同じ傾向を示したことは興味深い(図表2)。正規社員に絞った際のスポットワーク実施率は8.6%であり、その実施頻度もほとんど同様であった。非常に多様な就業者がスポットワークに従事していることが示唆されている。
「スポットワーク」には大手を含めて各社が参入をしており、認知も一気に広がったこともあり、実施者が増えているなという印象である。正規社員も同じ傾向を示したというのは意外ではあった。だが、継続的に利用している層というのは全体の中ではまだまだかなりの少数である。一気に利用者が拡大してメディアを騒がせている印象が強いが、飲食店といった一部の特定職種の利用に限ったものであることが伺える。もちろん「スポットワーク」でやれる業務というのが前提となるので、それは腑に落ちる結果ではある。
では、スポットワークを実施している者はどんな人なのだろうか。
まず若手が多い。19歳以下の就業者では18.9%、20歳代では14.5%、30歳代で10.5%と若年層が極めて多く、その後は年代が上がるごとに実施率が低下しているが、60歳代の4.0%が最も低く、70歳以上では6.8%と上昇している。これは高齢者層の「小さな仕事(※)」を探し実施する方法としてスポットワークを用いている者が一定数いることを示しているのかもしれない。
※坂本貴志,2022,ほんとうの定年後,講談社などで、リクルートワークス研究所坂本研究員が提唱している概念
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若者ほど経験をしたことがある割合が多く、特に10代では2割弱となっているのは高い印象だ。だが、このデータはスポットワークの代表的な存在である「タイミー」の年代別ワーカーと比べるとかなりの乖離があり、非常に興味深いものとなる。
タイミーのIR資料をみると「タイミーワーカー属性」割合は下記のようになる。
【年代別】
・10代:4%
・20代:26%
・30代:20%
・40代:24%
・50代:20%
・60代以上:5%
【性別】
男性:52%
女性:48%
実施割合としては10代は多いものの実際のワーカーとしては実はそれほど多くない。タイミニーの特徴は20~50代が満遍なく存在しているところにある。
10代、20代前半はスキマ時間で気軽にお金を稼げるバイトという形の利用が想定される。20代後半、30代、40代では年代と性別が分かれているデータのため推測にはなってしまうが、副業OKの会社で勤務しながらスポットで働いたり、育児の合間にアルバイト的に利用したり、中には非正規の方が掛け持ちで働く場所の一つなっていることも想定される。50代も多いが感覚的にはアルバイト的な形に近いのかもしれない。
リクルートワークス研究所のスポットワークの定義では「数時間単位で継続を前提としない」となっている。一方タイミーは単発で終わらせるというよりも「勤務時間がスポットなだけで継続的な利用」を意図しているところに大きな差があると思う。タイミーはワーカーへの評価やお気に入りワーカーなどの機能も充実しており、同じ職場での勤務経験があるワーカーの割合も非常に高くなっている。
つまり世の中の流れ的には「スポットワーク」と言えども継続を前提としないわけではなく、あくまでスキマ時間に働きたいだけであり、環境が良ければ継続もOKとなっていることが伺える。雇う側も教育コストを考えるとリピーターの方がありがたく、両者のニーズはマッチしているわけである。
とりとめのない話になってしまったが、「スポットワーク」の定義は早くも見直す必要がありそうだ。