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詩集

161
詩、ポエム、詞のタグが付いた投稿を一つにまとめたものです。
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2020年9月の記事一覧

雨が降っている
雨にはハズレがない
雨が降っていると嬉しい
雨に濡れるのは嫌じゃない
雨傘をさして動くのが鬱陶しいだけだ
雨の日にだけ音がある
雨じゃない日には曇りにも晴れにも音はない
雨の日にはお気に入りの音楽さえ必要ない
雨をテーマにして作られた楽曲が
雨そのものより音楽的だったことは一度もない
雨には捨て曲がない
雨が至高の純音楽
雨音が好きだ
雨が好きだ

責苦の塔

もう誰かのせいにしない
自分のせいにしない
他人のせいにしない
自分の力でどうにかできないことに
心を痛めないようにしたい

もう何かのせいにしない
環境のせいにしない
境遇のせいにしない
もうジタバタしない
ダメなら終わり
誰だってそうだ
私だって例外じゃない

責苦の塔を
ひたすら積み上げるためだけに
ここにいるわけじゃない

分水嶺

分水嶺

嘘に慣れて何もかも
信じられなくなる前に話そう
このまま先行くことは
誰かの屍を越えて行くこと

望まぬ未来感じたら
そこが分水嶺かもしれない
勘違いで始まっても
引き返せる内に戻っておいて

嘘に慣れて何もかも
霞みがかって見えるなら逃げよう
言葉の裏探っても
分かることなんてもう何もない

想像上のイディオム

想像上のイディオム

メスカリンバトミントン
三毛猫の三つ子
肘と膝がくっつく
三環系サーターアンダギー
火星の雨期
細目でプロポーズ
雪崩式新郎新婦入場
結婚式の12次会
気球に乗ってタイタンまで
月から援護射撃
ノーミスでザナドゥ
真夜中のサンディエゴ
酔っ払いからチップ
ギターノイズで鎮魂
塩鯖に塩
古城の夕暮れ
伸身の土下座
盗聴マイクで告白
政治家のサンバ
官僚の牛追い祭
バラエティ番組と全く同じ幻覚
深夜ラ

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無機質

同じような顔と体躯で
寸分違わぬ思想と言語で
構築された出来のいい贋作
個性も何もありはしない

3分の1は売り渡し
3分の1は夢の中
残りの3分の1は
物言わぬ路傍の石のように
ありとあらゆる理不尽を
受け入れながら
無機質にただ転がっている

不協和音

不協和音

そうではないかと思っていた
何もないということ
虚無的であるということ
全てくだらないということ
それを知りつつ生きることを
選択しているということ

ならば
書き綴れ
歌え
踊れ
祈れ
叫べ
描け
見出せ

もしくは
放て
不協和音を
ノイズを

徹底的に
無慈悲に

雲の破片

雲の破片

傷口に染み入る
痛みはどこへ
飛ばしてしまえば
いいだろうか

あの空の高みまで
飛んで行けば
あの雲の破片ごと
吹き飛ばしてくれるか

朝焼けが照らし出す
その顔叩いて
目を覚ましてしまえば
始まれる

この陽の光だけ
浴びていれば
このまま変われると
確信していたのに

塞いでも塞いでも
溢れ出す何かを
この手で壊せたらいいのに

走っても走っても
追いかけてくるもの
引き離すことなど出来ない

リタイア

リタイア

星の数ほどいる人々の中で

それぞれが何を想う

聞こえないフリして

見えないフリして

だましだまして

生きていくのも

辛いなぁ

湧き上がる歓声

横目で見ながら

「これでいいのか」

と自問自答

ああ

これくらいの痛みで

意識を飛ばした

願わくばもう少しだけ

強い精神を

昔のこと思い出すたび

虚しくなって

後悔ばかりしてたんだな

今更ながら

今でも変わらぬまま

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経年劣化

右を見ても

左を見ても

変わらない風景

退屈な日常を

受け入れる代わりに

与えられる安心感の

象徴のような景色に

一定の価値を見出すには

「あの時は確かに幸福だった」

という揺るがない過去が必要不可欠

それがなければ

この先も変わることがないことを

約束された景色を

視界に認めながら生活することは

あまりにも苦しい

なんの愛着もない風景が

日に日に色をなくし

寂れ

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町の抜け殻

町の抜け殻

連れて来られた町を

出て行くこともせず

何もできないまま

時間だけが過ぎて

しがみついたまま固まった

セミの抜け殻のように

ただ貼り付いている

長く伸びてきた町の影に触れて

私の影は辺りの影と

もう見分けが付かなくなってしまった

下を向いて影と重なってる間に

さっきまで貼り付いていた

抜け殻はいつしか

柔らかな風に揺られて

音もなく そっと落ちて

私を置いてどこかへ

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昔の友人

昔の友人

顔も覚えていない
名前も覚えていない
遠い昔の友人
何してるかな

もう会うこともない
偶然どこかで会っても
きっと気付けない

同じ時間を共有してた
ただそれだけ

この世にいるのか いないのか
いなくてもいいさ
あなたもわたしも

シルエットだけの
関係性だけの
記憶の中だけの存在
夢かもしれない

きっと会うこともない
あまりにも淡い思い出

記憶の隅の隅に
ただいるだけ

この世にいるのか

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夜明けより先に

夜明けより先に

いまさら

何もかも捨てて

遠くに行くだなんて

捨てるものすらないなんてことは

自分が一番よく知ってるじゃないか

あんなに好きだった人の顔も声も

もう思い出せない

忘れた

光より速く

あんなに嫌だった嘘も予定調和も

もう気にすらならない

笑った

夜明けより先に

停滞

停滞

何も見たくない
何も聞きたくない
何も話したくない
何も感じたくない

体の全ての活動を止めて
ただの石ころになって
風化して塵になるまで
何も思考することなく
停滞していたい

こんなにも乏しい感受性でさえ
もう我慢ならないほどに煩わしい

Autumn Sea

Autumn Sea

雨は
いつか
ここへ
戻って

新しい
種を
育む

風は
去って
ここは
静か

新しい
鼓動を
感じる

しー
耳を澄ませ
瞼を閉じて

聴こえる