経年劣化
右を見ても
左を見ても
変わらない風景
退屈な日常を
受け入れる代わりに
与えられる安心感の
象徴のような景色に
一定の価値を見出すには
「あの時は確かに幸福だった」
という揺るがない過去が必要不可欠
それがなければ
この先も変わることがないことを
約束された景色を
視界に認めながら生活することは
あまりにも苦しい
なんの愛着もない風景が
日に日に色をなくし
寂れていく
悲しいことなんて
何もないはず
だってなんの愛着もないんだから
それでも
誰も通らない道
遊ぶ子のいない公園
耕されない土地
聞こえない喧騒
剥がれ落ちない記憶
こびりついて固まる泥
束の間の休息と安堵
虫とぬかるみの世界
かつてここにいて
今はもういない人達に
思いを馳せるたびに
形容しようのない
寂しさを覚える
緩やかな下降と収束
何かが始まる気配は
ずいぶん前からない
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