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黒夢 CORKSCREW A GO GO SAINT MY FAKE STAR

2025年2月11日。たまたま関東で用事があり、その流れで横浜に立ち寄って黒夢を観てきた。

2月9日が一瞬でソールドアウトしたので、追加された横浜公演。見えにくい真横までは使ってなかったけど、概ね会場は埋まっていた。


振り向けば横浜
会場はぴあアリーナMM


第一印象「当時と変わらない!」

4階席の遠目から観た清春さんであったが、シルエットは当時と変わらない。

左右の大型ディスプレイで観ると、金髪にバンダナしてるのが、80年代ガンズのアクセルを彷彿とさせるなぁと思った。

上手のディスプレイは遠いので小さく見える
下手のディスプレイは近いけど乗り出さないと見えない

アクセルが年を食ってビール樽のようにふくよかになったのと比べて、清春さんはカッコいいままでおられる。

そして、向こう見ずで、後先考えなさそうな危うい雰囲気は健在で、やっぱり凄いなと思った。


歌っている率はかなり高かった

歌い続けるとバテるのか、歌わずにマイクを客席に向けるシーンもあった。…と書いて思い出した。四半世紀前から既にそうだった。新宿LOFTのライブ音源でも確認できるので、「当時と変わらない」の範疇だ。

清春さんのパフォーマンスに関しては、「上手い」とか「喉の調子が良い」ではなく、「歌っているだけで偉い」みたいなところがある。同行した友人は最近(と言っても年単位で前?)SADSの再結成を観に行っていて「SADSの時と比べて、今回の方がまとまっていたし、歌っている率が高い」と話していた。

TV放送されていた「少年」の模様が確認できる。
https://www.youtube.com/watch?v=gRznXyIxSxk&t=20s

今回は、黒夢の曲を入念に練習してきた成果もあるだろう。いずれにせよ、56歳ができる最高のパフォーマンスだったと言える。

少年から壮年・中年になり、その年で「入れたり出したりしたい」とか歌うのはどうよ?って話だが、そんな心配もNEEDLESSなくらいステージはDRIVEしていた。

人時さんの長尺ベースソロでは他メンバーがステージからはけたり、アンコールが2回あったりもした。演出でありながら、必要な休憩も兼ねていたのかもしれない。


解散前にタイムスリップしたよう

最後のアルバム「CORKSCREW」を出した頃のライブを、自分達でセルフカバーするコンセプトのライブのようだった。セットリストと、ちゃんとしたライブレポは、note内ではこちらがオススメ。

バンドとしての黒夢は、アルバムを出す度に「違うバンドになったのか?」というくらい、音楽性の変化が激しかった。

だいたいの料理はカレー味にアレンジできるみたく、強烈な個性の清春さんが歌って、人時さんが弾くと、どんなジャンルも黒夢の音になる。

私が初めて軽音に入って文化発表会的なので演奏したのが「Miss MOONLIGHT」だった世代だけど、そっち路線の選曲は皆無だった。近い年代でもアグレッシブな「SICK」は、セットリストに入っている。

また、2011年と2014年に活動再開してスタジオアルバムを出しているが、こちらもセットリストからは除外されている。徹底的に、1990年代後半を再現するこだわりが感じられる。

2000年以降もSADSやソロ活動を経て、清春さんはさまざまな音楽性を渡り歩いている。そんな変化まではキャッチアップせず、いつまでも黒夢の幻影を求めるファンも多い。

「オマエラはコレが聴けたら満足なんだろ?」と言わんばかりに、当時のままの再現をぶつけてくるのが、皮肉っぽくも感じられる。満足なんだろ?と言われたら、満足ではあるけれども。


とは言え2人の表現に変化もある

清春さんに関しては、上手さで測るべきヴォーカリストではないと思う。独特のクセが唯一無二。

効き比べると、最近はビブラートやガテラルは抑えめで、ねちっこさが増したような変化を感じる。水ダウでも「歌詞が聴き取れない」とこすられていた。

今回は「当時のクセまで再現しているんじゃないか?」と感じるくらいの再現度だった。それでも、いろいろ渡り歩いたから広がった表現の幅が生まれたように感じた。少年冒頭アドリブなどなど。


一方の人時さんは、テクニカル系プレイヤーに転身された。

当時からよく動くフレーズを弾いていたし、カヴァーを試みると指が疲れる8分のリフは多かった。今回のベースソロでは、16分で動き回る速弾き系ベーシストぶりを魅せてくださった。

特にベースソロでは5弦を弾き倒していて、ジョン・マイアングっぽくもあった。黒髪ロン毛で長身なテクニカルベーシストはだいたいマイアンっぽく見える説はある。強弱つけてグループ感もあった。ちょっと長かったけど。

黒夢の解散後、私はメタルを掘り漁ったし、SADSがメタルっぽくなったこともあった。改めて聴き返すと黒夢の良さはメタルとは違った攻撃性の表現にもあり、それを支えていたのは人時さんだったように思う。


低音の輪郭がボワっとしてたのは残念

ライブの音響について。座席が遠くてスミッコだったせいなのか、会場の反響なのか、序盤はとくにボワボワして聴き取りにくかったのは惜しかった。

ベース始まりでフレーズの細かい曲は、イントロを聴いても「カマキリなのかBARTERなのかどっち?」と判断がつかず、他の楽器や歌が入って「BARTERか!」と分かる感じ。どっちも聴けたからいいけど。

今回のセットリストは、アルバム「CORKSCREW」のパンク曲や、勢いで押し切るハードな曲が多かったので、ボワっとした音が悪目立ちしてしまった。演奏自体はメチャクチャ良かっただけに惜しい。

カメラも入っていて、3/30の放映ではライン収音で観られるかもしれない。なんとか視聴を試みて、改めて聴きたい。


金管楽器がアクセントとして効いていた

ゲストでサックスとトランペット(?)が紹介され、直後の選曲は「HELLO CP ISOLATION」だった。中盤のアクセントとしても良かったし、曲のあるべき表現としても、メチャクチャ良かった。

正直、スカパンクみたいな「HELLO CP ISOLATION」や、いきなりラップしだす「DRUg PeOPLE」(今回は演奏されなかった)あたりは、アルバム内の遊び曲枠だと思っていた。

見くびっていて申し訳ないと思うくらいの完成度で演奏された。この曲は、生演奏の金管楽器が入って活きてくるんだ。そしてそれは、清春さんの音楽性の広がりや交友関係を通して、四半世紀かけて具現化できたんや。

一方の「MARIA」のアルバム版は、当時から「シングル版で完成されているのに、わざわざスカパンクにしなくても…」と感じていた。今回のライブでは、金管楽器が入ることで、原作レイプがより先鋭化されていて感慨深かった。


2025年の夏~秋に全国ツアーやるってよ

人時さんの誕生日7/19~秋頃にかけて全国ZEPPでツアーするらしい。

ご自由にお取りくださいフライヤー

5月病で喧嘩して仲違いになる可能性も否めないけれど、会場をおさえているし、おそらく遂行すると期待できる。

同じく「CORKSCREW」を冠していそうなので、2010年代の活動を追えてない古参ファンにも安心だし、これを機にSADSやソロ活動を追ってみてもよいですね。

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odapeth
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