酒蔵見学に来たらヴォーリズ建築にお出迎えされた@千代田蔵
2023年12月、大阪吹田にある生島酒店さんの御一行にお供して、神戸市東灘区にある太田酒造株式会社 灘酒造場 千代田蔵を見学してきた。日本酒のブランドとしては「道灌(どうかん)」「湖弧艪(こころ)」などがある。
阪神芦屋駅から南下しつつ神戸に戻るよう徒歩20分ほど歩き、海沿いに蔵がある。灘五郷で言うと魚崎郷だけど、いわゆる魚崎郷からは離れていて、西宮郷との間くらいに位置する。
ご一行の人数が多かったので半分ずつに分けて蔵見学させていただいた。先に待機場所としてご案内いただいた洋館がたいへん素敵であった。
https://www.ohta-shuzou.co.jp/sake_brewery/chiyoda-gura/
もともとは、昭和初期に建てられた大日本紡績株式会社 社長 小寺源吾の海浜別荘のヴォーリズ建築。映画やロケにも使われたことがあるらしい。
台所は使用人が食事したりできるようなダイニングの役割も果たしていた。
台所から小窓を開けてダイニングにサーブできるようになっているの興味深い。
玄関のステンドグラスもハイカラで素敵。
後半は酒蔵見学だった。洗米の真っ只中にも関わらず、かなり丁寧にご説明をいただいた。
「フクノハナ」をはじめ「五百万石」「山田錦」「兵庫錦」など、兵庫県産のお米を使っている。
お米を洗うマシーンはあるものの、お米ごとに浸す時間をきめ細かく調整したいので、少量ずつ手作業でやるという話だった。
杜氏さんの職人技による目視で浸す時間が決まり、決まった時間が同じお米へと展開される。今シーズンから新しくベテラン杜氏さんを迎えられ、「能登流」の酒造りをされているという話だった。
少しずつのお米を並列で浸すのは、複数コンロでお料理するみたく、取り出すタイミングが被ると焦りそう。
そして、蒸す工程も見せていただいた。均一に蒸し上がるように、上部にダミー米を敷いているなど教えていただいた。
タイミングの見極めがブレてはいけないので、シーズンを通して同じ担当者が蒸すという話だった。責任重大。
酒母も見せていただいた。協会7号酵母、9号酵母と明利酵母等の酵母仕込み。仕込み水は西宮ではなく、魚崎水系の硬水を井戸から汲み上げて使う。
タンクは数が限られているので、仕込んで醸して絞って洗って仕込んでをローテーションする。
前回書いた「下り酒」「地酒」の対比で言うと、めちゃくちゃ後者の地酒っぽいなと感じた。
滋賀県にある太田酒造が酒造りを始めたのは江戸末期、灘に蔵を構えたのは昭和時代になる。いわゆる灘五郷で昔から「下り酒」を醸していた酒蔵ではない。
杜氏さんが主導して、約150石強位の酒造りをするところも地酒らしさがある。フルーティーな生原酒を造られている。生原酒でも燗酒に向くように、やや酸味がある。
前半に見た貴賓館の印象に影響を受けて、伝統とハイカラのミクスチャーという印象を持った。料理に合う濃厚甘口な路線からは古き良き灘五郷の酒を感じつつ、地酒が得意とするような華やかさやフレッシュさも兼ね備えている。
山廃造り、オーク樽詰も醸造されているとか。過去には古酒なんかも飲んだ記憶がある。振れ幅として、灘五郷にもこういう酒蔵があるのは面白いなぁと思う。
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