「〇〇でメシを食う」のふりかえり2022
起伏の少ない会社員をやっていると、「写真でメシを食う」「映像でメシを食う」「音楽でメシを食う」ような人生に憧れることもある。
「○○でメシを食う」と言ってみたさに、報酬としてメシを食わせてくれたらお手伝いする活動に取り組んできた。
直近では、モバイルモニタースタンドのクラファンに使う紹介動画を撮ったので、お披露目できるようになったら100万回くらい観て欲しい。そして巨匠からメシを食わしてもらう予定。
チラシに使う写真、SNSにあげる映像、商店街に流す宣伝曲などなど。プロに頼む程ではないけれど、それなりのクオリティは欲しい状況は、意外と身近に転がっている。
「そろそろあいつと会っとくか」と、メシを食うことが主な依頼もあったかもしれない。
アドベントカレンダーの趣旨に従い、2022年の「○○でメシを食う」を振り返りつつ、よく聞かれることを書き記す。
日本酒の魅力を伝えるお手伝い
私的な今年のニュース。これまで写真を中心にお手伝いしてきた「スタンディングバル 和in」で、2022年9月からは日本酒担当スタッフとしてお手伝いしている。
この人生で飲食業の経験が無かったので、不惑目前にして先輩女学生から生ビールの注ぎ方やハイボールの作り方について教わるのは、斬新な経験だった。
いや、サマソニで社内ベンチャーの日本酒を売ったことはあったか。
私に期待されるのは日本酒まわりで、これまでお客さんとしてお店の日本酒はだいたい制覇してきた。スタッフになったことで飲んだことのない日本酒は開栓時に味見ができる(※ここが大事)。
この中で辛口はどれか?この銘柄はどんな味か?出された利き酒セットはどの順で飲めばよいのか?…に答えられる学生バイトさんは少ないので、なんやかんやで重宝されている。
最初の頃は日本酒を入念に予習して臨んだ。今でも余裕があれば予習はするけれど、要点をおさえておけば接客がこなせることも分かってきた。
本業が終わってお店に駆けつけて、20時前後までお手伝いをすると休憩があり、また閉店までお手伝いをする。まかないメシのある現場が好き。
報酬は利き酒チケット。労働の対価で飲む酒はカイジの「ペリカ」っぽくて素敵。
私自身、日本酒担当スタッフをやるのは好きなんだけど、有能な学生バイトさんが入れば丸く収まる話ではある。日本酒に興味のある神戸付近の若者で「我こそは」という方がいらっしゃれば、まずは足を運んでほしい。
それまでは臨時スタッフとして人員不足を補う日もあるので、冷やかしのご来店を雄町しております。
ブランドをつくるお手伝い
話は変わって、友達のデザイン事務所をお手伝うようになった話。
農園とクリエイターを掛け合わせて商品開発をするローカルなコンペがあって、予選通過した友達から「手伝ってくれ」と依頼があったのは、ちょうど1年前の年末年始だった。
もともとはイメージ映像の撮影・編集の依頼だったのが、クリエイティブだけでなくビジネス面の説明も求められるコンペだったため、会社員として培った「それっぽい資料を作るスキル」をフル活用してお手伝いした。
彼とは小学校の学級新聞を作っていた頃からの仲で、彼は今デザイン事務所を営んでいる。私もメーカーのインハウスでデザインに携わっている。巡り巡って似たような業界にいることがわかった。
コンペでは勝てなかったけれど、デザインの過程でお互いに持っていないものを補っている手応えがあった。彼は右脳優位で、感覚・視覚的にエモい何かを創り出すのが得意。私は左脳優位で論理の積み上げで考え、文章にするのが得意。
それ以来、今年は彼のクライアントワークを手伝うことが増えた。依頼されて制作するのはWebやチラシなんだけど、「どうせやるならブランディングから見直した方が費用対効果も高いですよ」と持ちかける。
ビジネスインタビューをもとに3C分析をして、競合と比べてどこで差別化するのか軸をとって、コンセプトを決めるというワークをお手伝いした。以降のデザインは「オシャレだから良し」ではなく、コンセプトを体現してその印象を与えることを目指す。
デザインに落とし込んで具現化するにあたり、必要になる予算は各種制度や補助金から引っ張ってくることもある。取り組みやデザインについて説明が求められることがあれば、作文等もお手伝いする。
最初は「チラシ作りたいだけなのにメンドクサイことさせるなぁ」という感じだったクライアントが、小さな成功を手にて徐々にやる気になってゆく過程はスリリング。
案件のうち1つでグッドデザイン賞を獲ることができ、デザイナーとして名前を入れてもらったのは2022年の成果。
Q: どうやって副業しているの?
以下、よく聞かれることシリーズ。お店に立っていて「昼間は会社員なんです」と言うと、決まって「どうやって副業しているんですか?」と聞かれる。
形式上「A. 副業ではなくお手伝い」という答弁になる。質問の意図であろう「私も副業したい」に応えられる形態でもない。
私の勤め先の就業規定の該当部分を要約すると「①許可なしに②他のお仕事をして③本業に支障が出たらNG」のようなことが書いてある。大枠はどこも似たようなものだろう。
これを突破するには、①正面から許可を得る、②お仕事ではない説明がつく、③支障を出さない、のどれかを満たせばクリアできる。
おそらく①は前例がなくコストも高そうなので、②と③の対策をしている。③単体だと「本業が疎かになっている!」とこじつける余地があって弱い。たぶん副業関係なく元から疎かだろう。念のため②と③の合わせ技で説明できるようにしている。
Q: 本業の役に立っているの?
これもよく聞かれる。個人的には役に立つことだけを追及する人生なんてツマラナイと思う。でも「役に立つよ」とは答える。
本業でも制作の依頼を受けることがある。そんな時に、言われた通りにつくって終わりではなく、依頼してきた人が叶えたい目的に遡って「こうしたほうがよい」と提案して、仕事の幅を広げるところは見習いたい。
予算確保の方法として、会社の中からは決裁者を説得する選択肢しか見えない。社会に目を向けると観光資源づくりや文化を守るなど、事業内容が目的に合っていれば引っ張ってこれる予算もある。何本か通せたので、本業側でもやってみたい。
…みたいな直接的に役立つエピソードも挙げられる。ただ本質は「越境学習」にある。本業と外の世界を行き来することで、そのどちらでもない新しい当たり前を生み出した時に初めて「役に立つ」と言える。
視点めいたところで、大きな企業にいると事業の一部分だけに目が向きがちなところ、スモールビジネスの方が全体像が見える実感がある。先立つものを元手に、作り込んだ価値を込めて、対価を手に入れる。人々が何に価値を感じてお金を払うのかを最前線で観られる。
仕事じゃないジレンマ
ビジネスに挑戦する人へのリスペクトから、私が得意とすることでお手伝いしているという側面はある。
お手伝いする相手は、まさに人生をかけて商売をしている。仕事じゃない論法があるから手伝えるのに、お手伝い気分で職業体験しているのが失礼な気もしてくる。ジレンマ。
本気出してお金を貰って生業としてやってはどうか…と思ったところで、どう見積もっても会社員をやっている方が割は良い。会社にいると会社の悪いところばかり目につくけれど、安定してお給料を払えている会社って実は凄い。
ただ、今のように安定した本業がありつつ「○○でメシを食う」をやっているおかげで、割の良さではなく面白さで仕事を選べている。
本業にではなく家庭に対して支障あったりはするのだけど、ご理解をいただいて2023年も面白いことをやってメシ食っていきたい。
「文章でメシを食う」の道を開くため、サポートいただけると励みになります。それを元手にメシを食ってメシレポします。