卯の花腐し と 知りたい迷子
雨。
その降り方や季節によって付け分けられた沢山の名前がある。ざっと見ただけでも、色っぽいというか…艶を感じるのは、私だけだろうか。
言葉ひとつで、温度や湿度に香りまで表せてしまうのって凄い。季語ってそういうことなんだろうな。ひと単語にたくさんの意味合いが込められてるって凄い。(語彙少なすぎ)
ただ雨の立場からすれば、「アタシャ雨なんだけどね、ずっと。元を正せば水だしね」なんて思ってそうだけど。そっちでに色々勝手にキャラ付けしないでよね!なんて言ってそう(笑)
卯の花くたし っていう言葉が今のところ一番好き。この卯の花はオカラの煮物の方ではなくて、5月頃に花が咲く低木の名前。別名ウツギ。
モノによっては梅雨の異名なんて書かれているのもたまにあるみたいだけど、もう少し早い時期なんじゃないかな。梅雨前に少しだけ続く雨。どっちかって言うと、梅雨の走り。
白い花が多いけどピンク色もあるし、斑入りのように見えるものもあったはず。昔から日本にある種類は小さめの花で、改良されたものは少し大きめの花を咲かすんじゃなかったろうか。(この辺うろ覚え)
このウノハナをまるで腐らせるかのように降る雨だから「卯の花腐し」って書いて「ウノハナクタシ」って読むって知ったときは、「ほぉ~」と思った。クサルとかクサレじゃなくて、クタシって乙な感じがする。
これを知って、俄然ウノハナが見たくなった。
が…、花には季節と言うものがある。
そのうえ花に(も)疎すぎて、たとえ花が咲いていても、ぱっと見ただけではどれがウノハナかわからない。悲しいかなどこの木や花にもネームプレートが付いているわけじゃないし。
似たような花を見かけたら、「茎の断面を見ればいい」と教えてくれた人がいた。(勝手に折ってはいけません。折れ口や枯れた部分を探しましょ。)
中が空洞になっているから「空木」と書いて「ウツギ」とよむんだとか。
その人は植物にめっちゃ詳しくて、押し付けがましくなく面白おかしく世間話のようにいつも話してくれた。あ、あれは教えてもらってたんだって気づくのは、たいてい「じゃねっ」って別れてから。
その人は、春の野辺に咲く白っぽい小さな花の見分け方も教えてくれた。それだけは今もしっかり覚えてる。
ハルジオンとヒメジオン。花が上むきなのがヒメジオン。ガクの辺りでヘコンとお辞儀してるようなのがハルジオン。その見分け方は…「もっと胸をハルジオン!」って覚えるらしい。あってますよね?○○さん(笑)
何かにつけてこんな感じで、ゲラゲラ笑いながら知らない間に覚えていった。元気かなあ〜、あの人。
ヒトにものを伝えるってこういうことなんだなぁ。私には無理そうだなぁって。
何か新しいものをひとつ知ると、それでそれで?じゃあこれは?って、ズンズン闇雲に進んで行って迷子になる。思えば遠くに来たもんだ…なんて遥か遠くに見えなくなった出発地点を探し直すなんてことは、もう日常。
結局、元々知りたかったことじゃないものをたくさん抱えて、またそれぞれを探し求める旅に出る羽目になる。私っていっこうに芽の出ない畑みたいだ…。でも、その迷ってる時間も好き。
あ…話がそれちゃった…。
初めて意識して見たウノハナは、確かにこれは雨が続くと腐るかもな…と思える花びらだった。ツツジみたいな薄手で水分に弱そうに見えた。でも、とっても甘い香りがしたのは覚えてる。細い枝一杯に花が付くらしい。時期が合わなくて満開をまだ見たことはない。華奢な花びらに甘い香りに空洞の茎。ウノハナ・ウツギ、何だかそそられる花。
この夏、これ以上の災いが重ならないように祈りたい。
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