シナモンロールの巻
初めてシナモンロールを焼いた。伸ばしが甘いわ、凹みは少ないわ、きちんとロールになっていないわ…で散々だけど。初めて記念なので ね。笑
いつだったか、どこでだったか、食べた背景は何も覚えていないのにシナモンロールが美味しかったことだけはしっかり覚えている。
シナモンロールといえば、かもめ食堂が有名だけど、あの映画を見て「あっ!」と思った記憶があるから、私のシナモンロールの記憶はかなり昔のものなのかもしれない。
ケーキやクッキー、パンを焼くお母さんに憧れはしたけれど、きちんと軽量して作るものは私にはとてもハードルが高かった。
作っても誰が食べる?
私が好きなもの作りたいものを家族が好きとは限らない。
最初からうまくいくはずない…
誰にも喜ばれない、美味しいかどうかわからないものに材料費をかけるなんて…
ずっとそんな風に考えてた。
けど、それって何か違うんじゃないかと思い始めた。
きっかけはなんだったか、これもはっきりとは覚えてないけど、きっといろんなことが重なり合って複雑に絡み合って出てきた答えなんだと思う。
やってみなきゃ分からないじゃん!って。
随分前、夕飯の献立に悩むよねって数人の友人と話してる時に「その時の自分が食べたい物を作るよ。」とあっけらかんと答える友人がいた。「え?家族に好き嫌いとかないの?」「文句出ない?」と場が少しだけ騒ついたことがあった。その時の私は騒ついた方。
「え?作るの私だし。嫌なら自分で作ればって言うよ。」
さりげなく当たり前のように言う彼女が、その時は別世界の人間に見えた。家族の誰か…が食べないかもしれない物を作る勇気はあの頃の私にはなかった。
よくよく考えてみると、作らなかったから家族は食べなかっただけで、食べず嫌いを決めつけてただけで、そうじゃなくてもそもそも家族の嗜好ばかりに重点を置くのって何かおかしくないか…私だって家族だぞ!と。
少し前、近くの店でシナモンロールを見かけてひとつだけ買った。
お昼ご飯用に、おやつに、最近ようやく自分用にひとつだけの買い物をするようになった。
何気ない買い物の中で気づく。
私だけしか食べない物、私だけが好きな物…そういうものに今までたくさん蓋をしてきたこと。
私だけ は、無駄なものだといつのまにか自分に刷り込んでしまっている。
失敗しても自分で責任持って食べればいい。パンは冷凍もできるじゃん。数回買う分で材料費が賄えるじゃん。
自分を動かすためにたくさんのメリットを数える。
さらっと調べただけで、ネットではたくさんのレシピに行き当たる。
読み比べて共通点を探して、より詳しく書かれている方を採用して…それだけだときっと作ってる最中にパニックになる。そうだ全部書きだそう!
書き出すうちに手順も少し頭に入る。初めてのこと、避けられる失敗は予め排除したい。
ついさっき焼き上がった初めてのシナモンロールは、パンの食感はなんとか保っているものの、少し粉っぽく少し大きく…甘くなく…改善点があまりにもわかりやすい。
強力粉はあと4回分ある。また焼こう。私好みの味になるように。
時間はある。その時間を毎日の何処に嵌め込んで行くかだけ。生きることに手を貸してやらねばならない幼い子がいるわけでもない。
子らもいなくなった今「私が好きなもの」の蓋を開けて少しずつ取り出していこうかなって思ってる。
今年やってみようと思っていたことのひとつめ。シナモンロールの巻の幕開け。
本当はアップルパイが焼きたいのかもしれない。
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