7月30日 ぶっ殺したい
最悪だ、なんて最悪な喫茶店なんだろうか。
今日はせっかく午前中でバイトが上がれたというのに、なんて最悪な喫茶店なのだろうか。
そうゆうえばさっき、レジの向かいにいるキュートなあの娘に勇気を持って手を振ったら、とても嫌そうな顔をされたな。てっきり喜んでくれるもんだと思っていたから、あの表情には正直驚きを隠せなかった。家の中に小さな虫が出た時とかも、アレと全く同じ筋肉の動かし方をして、あんな表情をするのだろうな。女の子はよう分からんわ。まあいいか。
それにしても最低な喫茶店だ。いや、喫茶店自体は悪くない。というよりも、割と良い。照明は薄暗く、背を丸めたおっさんが火種が指先に触れそうなくらいに短くなったタバコを、これもでかと吸い込みながら、シワクチャの新聞紙を読んでいたりして、グッとくる。斜め向かいのピンクのワンピースを着たおばさんは、色が薄くなったクリームソーダを完全に諦めていて、膝を組みながら難しい顔をして、なにかしらの本を読んでいる。素敵だ。そんな中真向かいの美魔女風のおばさん三人が甲高い声で大騒ぎしている。鉄パイプで鉄棒をぶん殴った時のような音を、口から出していて、気が狂いそうになる。キンキンと何をそんなに盛りがっているのかというと、メイクだ。驚くよ、喫茶店でメイクアップをしているのだから。
一人の美魔女がもう一人の美魔女にメイクを施している。もう一人の美魔女はサンドウィッチを頬張りながら、二人に釘付けになっている。
メイクをしている方の美魔女はメイクをする側だけあって、小綺麗な格好をしている。濃い緑のワンピースにベージュのハンチングのようなものを被っていて、田舎の大スターを思わせるような身なりをしている。
メイクをされている方は、とにかく鏡に映る自分の顔を眺めながら、ひとまず一週間効果を見てみるわ、だのなんだの。頭部が気まずい感じになっているのが虚しい。
サンドウィッチをムシャムシャ食っている美魔女は、金に近い茶髪ボブで、見るからに柄が悪い。サンドウィッチをあんな風にして食べるのだから納得がいく。美に興味がある割に、胸元にデカデカとHEROと書かれた、ヨレヨレのTシャツを着ている。世界一ダサいフォントだ。
この喫茶店は雰囲気はいいが、コーヒーの値段がとても安い。貧乏に良心的な店だからと言って、良心をもった貧乏が集まる訳ではない。最初はキーキー躾とは無縁のチワワのように、騒ぎ立てる美魔女達に怒っていたのだが、段々と悲しい気持ちになってきた。
最近は蝉が鳴き始めただなんて言っているが、ただ彼女達は蝉が鳴いていることを言っているだけだ。季節の季の字でも分かるやつだったら、こうも騒ぎはしないだろう。
たった三人が集まっただけで、こんなにも多くの人の時間を奪えるのだから、驚く。ゆっくり流れる時間に身を寄せようと集まった我々は、彼女達に殺されたも同然だ。
メイクをされた方が、「先生おいくらですか?」と聞いた。
先生は、「4500万円です」と言った。
個人的に想定していた、我々に支払われるべき慰謝料と丁度同じ額で驚いた。
先生が先に帰る時、残された美魔女二人が「またね。」と言った。その時だけ小声なのが癪に障る。
彼女達が一生背負うことになるような言葉を探し、それを胸に秘めながら、
僕は喫茶店を出ることにした。
僕がだ。
彼女達がなぜ僕の時間を奪うことが許されているのか意味不明である。
また、こうゆう時に限って、時間が進んでいることに気がつく自分にも苛立って仕方がない。
そうゆえば今日、一番性格に難があるバイト先のおばさんに、落合君はここにいない方が良いと言われた。同感である。
最近は、頭が狂っている。が、いずれ治る。
頭がおかしくなっている内に小説を書いてみようと思い、応募することにした。なんかおらワクワクしてきた。
==================================僕がやっているラジオのホームページ。放送後記とかもあるよ。
あと、アーカイブ
聞いてね〜〜。
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