2019-20 年末年始読書感想文

今回の年末年始休みは、曜日並びのおかげで結構長かったので、前から気になっていた本や人から薦められた本をできるだけ読もう、という時間にしました。同じ本読んだよ!という人がいたら語り合いたいです。連絡待ってます。

10冊ピックアップしてたけど、4冊しか読めず。ビル・ゲイツみたいに、シンクウィークやるかな。本を読んで思考を深めるのって大事だな、と改めて思いました。

21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考(ユヴァル・ノア・ハラリ)

ここ数年、自分の中で、これから自分が生きる世界を考える上で、気になって、もやもやしているテーマの中に「情報の欠如(もしくは多すぎること)によるステレオタイプな物事の判断」と「ネット原理主義」がある。前者は政治のポピュリズム化を助長したりすること(世の中そんな単純じゃないだろう)への懸念、後者は人間の判断をどんどんアルゴリズムに委ねる方向へ向かっていることへの違和感である。

いずれも、「情報をどう自分が判断し、行動に反映するか」に繋がることだが、処理しきれない量の情報が飛び交う中では物事は早く判断したいし、便利なことに負けてしまうことがある。その一方で、乗換案内の1分2分で間に合う間に合わないで一喜一憂している生活ってどうなんだろう、と思うことがある。

ITはもっと進化してバイオテクノロジーとも融合していくし、2050年ごろの世界を想像すると、この進歩は人間の生活の相当な変化、政治経済への影響があるんじゃないか、ということは何となくみえる。「21 Lessons」は、このテーマについて現状を考察しながら、近未来に向けて考えたほうが良さそうなことをまとめている。

ITとバイオテクノロジーの進展に関しては、「実際に恐れる必要があるのは、アルゴリズムによって力を与えられた少数の超人エリート層と、力を奪われたホモ・サプエンスからなる巨大な下層階級との争い」と警告し、国際政治に関しては「核戦争や生態系の崩壊や技術的破壊といった問題は、グローバルなレベルでしか解決できない。その一方で、ナショナリズムと宗教が依然として、人間の文明を異なる、そして敵対することの多い陣営に分割している」と現状を冷静に分析。

人間についての考察も面白い。「人間が世界を支配しているのは、他のどんな動物よりもうまく協力できるからであり、人間がこれほどうまく協力できるのは、虚構を信じているからだ。」と話しながら、「この世で屈指の虚構は、世界が複雑であることを否定し、無垢の純粋さvs悪魔のような邪悪さ、という絶対的な構図で物事を考える、というものだ」と、シニカルにまとめる。

ITによる生活の変化や世界のグローバル化に、宗教や政治が追いついていない現状にも懸念を表明している。

今後数十年、ITやバイオテクノロジーが人間の生活を今より劇的に変えていく一方で政治システムや経済もアップデートが起こりそうだな、と思う。教育も、何かを知っていることよりも、意味や必要不必要を理解したり、世の中の状況を幅広く捉える能力を教育で磨くことが重要になっていくんじゃないか。変化のスピードが速いから、過去の経験や知識を忘れて、自分自身を一生の中で何度もアップデートする必要がありそうでもある。

でも、こういうことを情報の海で急かされる日常の中でやるのは無理がありそう。ハラリは瞑想により自分と向かい合うことにたどり着いているが、日常以外のチャネルを持って、自己のバランスを取り、自己の狭い定義を脱しながらアップデートすることは重要なスキルになりそうだ。僕は、今年のテーマを「一歩前へ/自分のComfort zoneを抜け出す」としているので、自分をアップデートするチャレンジを始めてみたい。

子育てとばして介護かよ(島影真奈美)

著者の島影さんは、知人の奥方。彼女の義父母(つまり知人の両親)の認知症介護の話。著者自身が老年学を学んでいることもあり、もともとの性格もあるのか、それなりにストレスはありつつもうまくやり過ごし、介護サービスなど使える外のサービスも使いながら、別居して距離感持ちつつ現状に冷静に対処していく様子を伺える。

“「明るくて朗らかだけど、少々ニブい嫁」を全力で演じた。このキャラクター設定には、のちのちの介護の場面で何度も助けられることになる。”

認知症の介護、そりゃ中々大変だ。ただ、そんな中でも自分自身を大切にしながらもベストを尽くしに行くことが端的に現れている表現。すごい現状対応能力!

義父母、それから夫の人物描写を交えながら書いているのと、自分にとっても将来のことを考えると他人事ではないこともあるからか、非常にリアリティを感じ、読んでいてやたら情景が浮かんできた。

今回の内容は、認知症かも?と周りが認識し始めてから介護体制を作って回すところまでの話(続きはnoteで)で、そんなにボリュームもなくサラッと読める。

マイパブリックとグランドレベル(田中元子)

最近話題の東京「喫茶ランドリー」、帯広のスタートアップ支援サービス「LAND」を手掛ける田中さんの、グランドレベルデザインに関わるまでの経緯を書いた本。

飲めないのに楽しくしたいから事務所にバーを作り、次は公園でコーヒーを無料で「ふるまう」。この、お金に縛られない、やりたいからやっている、快楽すら感じる「ふるまい」で見つけた新しい世界を公共の場でやることで、仲間を集め社会と接点を持ち、これがまちの幸福レベルUPにつながると気付き、次に1F=グランドレベルの使い方の重要性を見出すと、世界に目を向けると同じコンセプトで様々なことが実践されている…。

看板の大きさとか高さとか、1Fの使い方にガイドラインまであるというポートランド。ベンチをたくさん置くことが市民の健康増進につながると、どんどん設置しているニューヨーク。パブリックなリビングのような台湾の「騎楼(2Fの屋根が歩道までのびているやつ)」。まず地元民の暮らしの質を上げて、観光客は一住民として扱うことを決めたコペンハーゲン…

住んでいるところの幸福度はどう決まるか?近所にコンビニがあるとか、電車の駅に近いとか、インフラレベルのこともあるけど、家や宿に戻る道すがら、ベンチで気軽に休めて、地元の人達が面白いことしてて、気軽に参加できるような…という場所なら、もっと楽しい場所になるだろう。

物質的な豊かさから心の豊かさへ、みたいなことは結構昔から日本の課題として言われているような気がするが、まず自分のやれることで、みんなで街を面白くしていけばいいじゃん!という肩肘張らない結論を、ひとつ見たような感覚を持った。

政府に集まったお金を地方に配って、箱物作ってもうまく行かないわけだ。街に活気を!とお金使ってイベントやっても駄目なわけだ。

この分野、これからもっと熱くなりそうな予感がするなぁ。

1兆ドルコーチーシリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの教え(エリック・シュミット/ジョナサン・ローゼンバーグ/アラン・イーグル)

ビジネス書って「こうするとうまくいく」的なのが多いから、要するに勧善懲悪の時代劇みたいなもんじゃないか、といつからか思うようになった。特にうまくいった経営者のエピソード的なものはある意味ドラマのストーリーであり、それにhow toがくっついてくる感じ。だから面白く、興味深く読める。でも、その話が自分の置かれている状況のソリューションになるかどうかはわからない、というのが落とし穴。

それがわからなくて、30代から40代の前半は一生懸命ビジネス書読んでその中で使えそうなことを実践して…みたいなことをやっていた。周りの人たちは迷惑だったと思うわ。スイマセンでした!こうした、ビジネス書の功罪に気づいてから、積極的にビジネス書を読むのはやめた。

思い返して見ると、仕事でうまく行ったときって僕の場合、目標とか課題の達成は前提としてあるんだけど、それよりもモチベーションの発生源は「このすごいプロダクトを世の中に広めたい」とか「この人を成功させたいなぁ」とか、人が考えたり作ったものに対する期待、愛情とか信頼のような気がする。

これって家族に対する思いとイコールなんだけど、ビジネスだって愛が重要だよ!という話題はなかなか持ち出すチャンスは無かった。

しかしこの本は、ビジネスにとって重要なのは経営者のビジョン、それを支えるチーム、チーム優先の考え方、信頼と愛であることを教えてくれる。「信頼と愛」がやっぱり大事なんだ!

グーグル、アップル、アマゾンの経営陣をコーチ(しかも無料)した、ビル・キャンベルの行い、考える姿勢を実例や経営学の引用で紹介していく本なのだが、アメリカの本にありがちな過度な称賛はありつつも、実際シリコンバレーの経営者たちに公私ともに多大なるサポートをした名コーチが何をしたか、というのは非常に参考になる。だって非常にシンプルだから。

* 経営者(創業者)のビジョンを大切にする。
* チームが大事。個人よりチームの原則。
* 信頼。人に関心を持ち、公私ともに必要なサポートをする。
(これって愛情がないとできない)

これを逆に個人の生活に持ち込むと、友達が増えるし、地域のコミュニティとか自分のグループで色んなことできるようになるし、取り組むことが変わるだけで大事なことは一緒だな〜と妙に腹落ちした。

マネジメント、リーダーということに関わったり、興味のある人は参考になると思うのでぜひ。

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