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茶葉を売る?お茶を売る?

売子のおばちゃん最強説!

日本茶の世界に右足全部と左足のくるぶしまで浸かった頃
百貨店の催事に販売員として茶農家さんの手伝いをしたことがあった。
その時はまだまだペーペーで、淹れ方もどこかぎこちない。
それでも今まで勉強したことを活かせる!と息巻いて「めっちゃ売ってやる!!」とまで調子乗っていた。

よく飲んでいたお茶。味は知ってるし、淹れ方も大丈夫。

「東京の若い子は、このぐらい薄い方がいいんやね。」

淹れたお茶を茶農家さんに飲んでもらって開口一番に言われた一言。
まじで帰ろうかと思った。。。

「うちのお茶はもう少し濃く出すとハッキリとした味になってよく売れる。」

淹れてもらったお茶は「もう少し」どころではない濃さ。
はじめの一歩の"ガゼルパンチ"をくらったぐらいの衝撃度。
(くらったことはないけど)

前に飲んだ時はこんなに濃くなかった。

「何でこんなに濃く淹れるんですか?」
「試飲のお茶は、湯呑み一杯がせいぜい。そこで味をわかってもらうにはこのぐらい濃い方がええ。」

納得。

その後、教わったお茶を一生懸命淹れてるのに
まじで売れない。。。
この日2度目の帰ろうかと思った瞬間。(当時はガラスのハートすぎた。。)

しかし!!

隣のベテラン売子さんがめちゃくちゃ売ってる。
声はデカいし、何なら態度もデカい。
しかし、百貨店のマダムたちにめちゃくちゃ売っている
試飲を進めれば、ぽんぽん売っていく。
お茶の説明なんてしているようでしていない。
淹れ方もハラハラするぐらい適当。
(ってか、おばちゃんお茶のこともよくわかってない感。)

売り文句は「こんな私が淹れても美味しいのよ!」

!!!!!!!

木村のドラゴンフィッシュブローをくらったぐらいの衝撃。。
(ただのはじめの一歩ファン)

このおばちゃん最強だ!!!

自分の見えていないところから的確に核心を突かれた感じがした。


その後は帰ろうと思うこともなく、おばちゃんと茶農家さんを交互に見ていた。(仕事しろww)
自分で淹れたお茶と何が違う?

茶葉を売る際に大事なことは、家でも淹れられる再現性ある淹れ方。
丁寧に順序立てて淹れるよりも、茶葉を買って家に帰った時にも同じお茶が飲めるかどうかのイメージを持ってもらえるかが大事。

全てが全てそうではないけれど、おばちゃんから買うお客さんはきっとそれを想像できている。

では、僕の淹れているお茶は何なのだ?

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今僕が淹れているお茶は、ドリンクのお茶として淹れている。

”一杯のお茶としての価値”

当たり前だけど、どんなお茶でも今では家で飲める。
これはコーヒーでも同じ。
器具と材料と淹れ方さえ理解して揃えれば家で飲める。

ただ、店と全く同じものを家で再現しようとするとかなりのお金が飛んでいく。
さらに言えば、どんなに同じものを揃えても"なんか違う感”が拭えない。

それは、そのお店でしか味わえない空間や空気感も含めて、その人が淹れた一杯のお茶へと落とし込んでいるから。

だから、家では味わえない一杯を提供することができる。

・茶葉を売る時は、淹れやすくイメージしやすいシンプルな淹れ方。
・お茶を売る時は、価値を掛け算して一杯に落とし込む淹れ方。

この違いは、淹れ手として明確に意識した方がいい。

茶葉だけではなく、その場にあった淹れ方。目的にあった淹れ方を意識しなければ、お客さんはもちろん、茶葉の本領も発揮できない。

もちろん、ドリンクとしてのお茶を飲んでから茶葉を買う人もいる。
どちらを選ぶかはお客さん次第だし、この選択肢の多様化が飲み手の楽しみへと変わっていく。

そこに気づかせるのも淹れ手の重要な仕事。

デンプシーロールのように、左右から日本茶の多面的な面白さを繰り出せるよう
僕らは日本茶を淹れ続けなければいけない。
連続で繰り出すからこそ、日本茶の価値はどんどん上がっていくのだから。

でも、あのおばちゃんが100人いればいいのでは?とも思ってしまう。



少し苦い記憶を思い出しながら7月の終わりを迎える。
とりあえず、はじめの一歩を読みに実家へ帰ろう。

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