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当事者がまとめてみた、双極性障害とはどんな疾患なのか

こんにちは。まゆです。久しぶりにnoteを書きます。

一番最初に書いた「はじめの一歩」という記事に、自分の障害特性や疾患と向き合うためにもnoteを書いていきたい!と宣言しつつ、なかなか取り組めずにいましたが、今日こそは書いておきたい。ぼちぼちがんばります。

さて、今回私が書いていきたいのは、私自身が今年の4月上旬に診断を受けた「双極性障害」についてです。

データ上では一生涯のうち100人に1人が発症するともいわれる疾患ですが、まだまだ社会的認知度が高いとはいえなかったり、病名は知っていても実際に有病している人と話したことがないよ、という方もいらっしゃるかと思います。

私も診断を受ける前は、「双極性障害」という病名自体は聞いたことがあったものの、詳しい病状や患者さん達の割合などのデータ、当事者の方々が診断後どのようなプロセスで治療の経過を辿り、社会復帰し、また暮らしていかれるのかということについて、その詳細を調べたことも考えたこともありませんでした。

そこで、診断前の私のような当事者ではない方々も含め、双極性障害の解像度を上げる一助になれたらいいなあと願いつつ、数回に分けて記事を書き、マガジンにしていこうと思っています。

現時点で書こうと考えている内容は、①双極性障害とはどんな疾患なのか②私自身の病歴について③私の病状について④体調を安定させるためにどんなことに取り組んでいるのか、以上4点です。(もしかしたら途中で内容を変えるかもしれませんが、今のところはこんな感じ)

この記事では、連続する(予定の)記事の第1回目として、双極性障害とはどんな疾患なのか。その概要をざっと書いてみます。

少しずつ書いていく予定なので、第4回目の記事までどのくらいのペースで書いていかれるかはわかりませんが、もしよろしければお付き合いいただけますと励みになります。

私が途中で飽きて、書くことを忘れませんように。

双極性障害とはどんな疾患なのか

概要

それでは、本題。

皆さんは「双極性障害」ときいて、どんなイメージが浮かびますか?
そして、この疾患はどのような病状をとるものなのでしょうか?

私の体験にも照らし合わせて簡単にまとめてみると、双極性障害とは、自分でもコントロールの難しい躁状態(大抵の場合、無意識下にハイテンションだったり過活動な状態)と、生きていることがつらくなり、その気持ちに押しつぶされるような暗く苦しいうつ状態を「繰り返す」疾患です。明確な原因は、現在の精神医療の研究ではまだわかっていません。

肝となるのは、躁状態とうつ状態を「繰り返す」こと。

そして、躁状態の激しさの程度によって、双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型の診断に分かれます。

さらに、うつ病とは治療法も異なるという点も、双極性障害の当事者やその周りにいる人たちにとっては大切なポイントです。うつ病のうつ状態と、双極性障害のうつ状態とでは、適応とされる薬が異なるのです。

私自身の病状については、第二回目以降の記事でもう少し詳しめに書く予定ですが、私は抗うつ薬の服用で躁転し、その後うつ状態となり、そのことが双極性障害Ⅱ型と診断される要因の一つになりました。

私は婦人科医のアドバイスのもと、PMDD(月経前不快気分障害)の治療のため、第二世代の抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を中容量ピルの休薬期間中に頓服で服用していたのですが、転職後の環境変化によるストレスを緩和するために、昨年12月以降は頓服から常用に切り替えていました。

この切り替えは、私には発達障害(ADHDとASD)があり人間関係などの環境変化が生じたときにストレスを抱えやすいことを背景に、薬が適応するのであれば、環境変化に対応するためにも常用する方針を精神科医と相談していたためですが、結果として、今年1月以降に躁転を誘発したことから、現在はSSRIの服用は中止することになりました。

このように、うつ病のうつ状態では一定の効果を得られるとエビデンスのある抗うつ薬が、双極性障害のうつ状態時には、躁転のリスクがあり、双極性障害の治療では原則避けるべきとされています。(双極性障害Ⅱ型の治療の際には、リスクとベネフィットを考慮した上で、時に用いられることもあるそうです)

このことは、うつ病と双極性障害の違いを認識する上では、大切なポイントだと思います。

データ

ここまでは、双極性障害の概要についてざっと書いてきましたが、ここからは双極性障害にまつわるデータを書いていきます。

記事の冒頭で、双極性障害は「繰り返す」ことに特徴があると書きましたが、それは「再発すること」でもあるといえます。この再発について、国内における双極性障害研究と治療の第一人者である、順天堂大学の加藤忠史先生はこういいます。

双極性障害の場合、極論を言えば躁状態もうつ状態も放置した場合でも自然に治ります。ところが発症後5年以内に約8割の方が再発しており、再発を繰り返すたびに社会的後遺症が大きくなるため、再発予防が欠かせません。

 GOOD HEALTH JOURNAL

厚労省のデータ(※1)によると、うつ病の再発率は6割ほどとされており、とにかくうつ状態から回復することを目指した治療が目標となりますが、双極性障害の場合は、うつ状態が良くなっても、躁状態になったり、うつ状態の再発を繰り返したりします。そして、寛解期(状態がおさまって穏やかになる期間)には、何の症状も残さないことにも特徴があります。

しかしながら、寛解したからといって、服薬等による体調のコントロールや予防をしていないと、上記のように「再発率」が8割以上と高いため、何度も再発してしまう。

そして、再発を繰り返す間に、職を失ったり、人間関係が途絶えてしまったり、家族関係が悪化したり、生きていく上で大切なソーシャルキャピタルや社会生活が障害され、双極性障害によってQOLが大きく低下してしまうことがあります。

この社会生活が障害されること、そしてQOLが大きく低下してしまう可能性があることに対しては、医療分野による研究や治療だけでなく、労務環境を含めた社会全体で双極性障害の認知度が上がることで、疾患への理解が進み、「知らない」ことからはじまる差別や偏見・マイクロアグレッションが減り、社会制度が整っていき、私たち当事者が過度なハンディキャップを背負うことなく、必要なサポートを今まで以上に受けやすくなっていくことを私自身としては願っているところです。

では次に、「診断されるまでにかかる時間」についてみていきたいと思います。

実は、双極性障害は初診で診断されることは少ない疾患であるともいわれています。というのも、私もそうだったのですが、うつ状態で受診した時には、当人もうつ状態の症状を医師に伝えますし、医師もその話を聞きながら必要な質問をしていき診断するため、初診で診断が確定することは難しいこともあるようで、その結果、適切な治療を受け損なってしまうこともあります。

さらに、双極性障害の躁状態、および軽躁状態(躁状態の軽いタイプで、当事者にとっては自覚的に気分が良い状態)では、その病識がないことも多く、診断・治療が遅れるということがあるようです。

かくいう私も、今年の1月中はSSRIを服用継続していたこともあり軽躁状態にあったのだと、今となっては認識しているのですが、その時点では、頭が冴えていて、エネルギッシュに仕事を頑張る気持ちもあり、ストレスも感じにくくなっている状態、とだけ考えていて、全く病識はありませんでした。

双極性障害の「診断にかかる時間」についての報告には、杏林大学の渡邊 衡一郎氏らによる2013年の調査があります。

最初の医療機関を受診時に正しく診断される患者は約4分の1しかおらず、初診から正確な診断に至るまでには平均4年かかる。さらに約1/3のケースで、正しい診断までに5年以上かかる。(著者訳、一部抜粋)

日本における双極性障害の認識と影響:インターネット調査の結果

この調査から今年で10年経過しているため、他のデータも探しましたが私では見つけられずでしたので、もし最新のデータをご存じの方がいらっしゃいましたらお知らせいただけますと嬉しいです。

最後に、双極性障害のある人の「就業率」をみていきます。

双極性障害当事者の「就業率」については、外来治療中の患者データとして、産業医科大学の近野 祐介氏らによる2017年の調査があります。

外来治療中の双極性障害患者の就業率は、43.5%であった。寛解期と比較して、躁状態またはうつ状態にある患者は失業リスクが高いことが示唆された。(著者訳、一部抜粋)

双極性障害の外来患者の気分エピソードと雇用状態との関係:精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査(MUSUBI)プロジェクトからの後ろ向きコホート研究

皆さんは、このデータをどう解釈しますか? 
就業率は、「低い」でしょうか? または「高い」でしょうか?

私としては、この「就業率」のうち、「自営業者」や「家族従業者」が含まれるかどうか、原著論文の全文を読了できていないために把握していないのですが気になるところです。法人に「雇用されること」のみが「就業率」に換算されているのか、家業従事者を含む「自営業者」や「家族従業者」はその対象外となっているのか。それによって、このデータの「低い」「高い」の解釈も異なってくるように思っています。

とはいえデータはあくまでデータでしかないので、今後の私の就業状況は自分なりに切り開くとして、社会に目を向けてみたときに、「双極性障害になると就業が難しい」というような、データとその人の状況とを分けずに貼り付けられるレッテルがなるべく少なくなっていくと嬉しいです。(実際に私の診断後、そのように伝えてくださる方もいましたが、当事者として「まだまだそのような社会的認識なのだな」と少しショックを受けたことを覚えています)

双極性障害の社会的認知については、まだまだ伸びしろがある!と思って、私なりに記事を書いていけたらいいなと思います。

まとめ

ここまで、「双極性障害とはどんな疾患なのか」という内容で、私なりにその概要・データをまとめてきました。

この記事では、記事上で引用注をいれた出典の他、主に下記から記事を書く上で参考にさせていただいています。

加藤忠史『双極性障害〔第二版〕——双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療』2019年、筑摩書房
日本うつ病学会 双極性障害委員会「双極性障害(躁うつ病)と付き合うために」2021年、最終閲覧2023年5月22日
(※1)厚生労働省 地域におけるうつ病対策検討会 「うつ対応マニュアル-保険医療従事者のために-」2004年、最終閲覧2023年5月22日

特に、加藤先生の新書『双極性障害〔第二版〕——双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療』は、一般向けに書かれた内容として手に取りやすい書籍なので、この記事を読んでもう少し双極性障害の基礎知識につき深堀りしたい!と考えてくださった方は、ぜひ参考にされてみてください。

今後また執筆していく第二回目の記事では、私自身の発達障害等も含めた病歴について、ライフチャートと共に書いていけたらと思っています。もし、お付き合いいただける方がいらっしゃいましたら、次回以降の記事もご覧いただけますと幸いです。

「なるべく手短に~」などと思っていましたが、ここまでで4500字を超えてしまいました。長くお付き合いいただきありがとうございます。

温度や湿度変化の激しい季節柄なので、皆さんもお身体お心大事にご自愛ください。調子がわるくなったら、その時にできうる最大の休息をとれますように。

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