「幸福」と「目的・目標」の探求(第2回ひとと事業の探求塾)
こんにちは!小布施まちの人事部です。
第2回「ひとと事業の探求塾」が11/5日に開催されました!
当日は、経営者10名と学生3名の参加がありました。
本記事では、当日の様子をご報告させていただきます。
a.小布施まちの人事部とは
小布施町の「まちの人事部」では、地域企業や求職者を対象に、人材採用・育成・定着の支援を行っています。
企業や行政、大学など様々な立場の人をつなぎ、地域全体で人事に向き合うことを目的としています。
経営者が人事と経営について学び合う「ひとと事業の探求塾」、地域の企業の次世代リーダー人材が企業や職種等の枠を超えて集い切磋琢磨する「まちの同期」、様々な大学に所属する大学生が町を舞台に暮らし学ぶコミュニティづくりを目指す「キャンパス化構想」など、多様なプログラムを通じて、人や企業のもつ力が豊かに発揮される環境をつくります。
b.ひとと事業の探究塾とは
〇「ひとと事業の探求塾」
ひとと事業の探究塾(旧 ひとづくり勉強会)は、インプットと対話で人事と経営について学び、言語化し具体的な行動を自身で考える時間です。
こんなことをします…!
・広く自社を捉えなおし、人事・経営に関する知識を学ぶ
・経営者の抱えている悩みやテーマを出し、対話を行う
・学びを言語化し行動につなげる
毎月2時間、経営と人事に関する知識を深める時間となっています。さまざまな年代の方々との交流を通じて、多様な考えに触れるチャンスがあります。また、県内外のゲストや町内の経営者と直接出会い、話す機会でもあります。
「経営に集中する時間が取れない。」「社員が働きやすい環境を整えたい」「新しい出会いや刺激が欲しい」そんな方にぜひご活用いただきたい場になっています。
〇全体コーディネーター・進行役の中村一浩さん
「ひとと事業の探求塾」では、人材開発・組織開発やイノベーション創出の研究・実践をしている中村一浩さんが全体のコーディネーター・進行役を務め、人や組織に関するゲストを招き、出会いと最新の学びを提供しています。
c.第1回探求塾のおさらい
10月15日、「ひとと事業の探求塾」の第1回が開催されました。今年度のテーマは「自己認識力を上げる」。自分の視点や思考の枠組みに気づき、新たな視点を受け入れる力を養うことを目指しています。
当日は高校生や大学生、経営者や社会人など15名が参加し、まずは「考えたいテーマを書き出す」ワークを実施。「売上向上」や「人材採用」など具体的なテーマから、「将来どんな仕事をしたいか」など自由なテーマまで、多様な意見が挙がりました。意見交換の中で、「立場」や「責任」を基軸に考える社会人と、「興味」や「好奇心」から考える学生の違いが浮かび上がりました。
進行役のカズさんの話を通じ、「心の置き方」や「内面」への意識を深めた参加者も多く、自己認識の重要性を実感する場となりました。
d.第二回探求塾「幸福」と「目的・目標」の探求
10月の心地よい秋風の中で、開催された第2回探求塾。
当初の予定では、元プロキックボクサー・ミドル級元日本王者の今野顕彰さんをゲスト講師に迎える予定でしたが、急遽登壇が難しくなり、内容を変更して実施しました。
今回は冒頭に参加者全員が自己紹介をした後、アイスブレイクとして「最近あったささやかな幸せ」を共有しました。
「おいしい芋を食べた」「久しぶりに母の目玉焼きを食べられた」「ダイエット中のご褒美で食べたポテトチップスが最高だった」など、秋の味覚に関する幸せが多く挙がる中で、「タクシーを待っていたら町の人が家まで送ってくれた」という人と人の温かいエピソードもありました。このように、参加者それぞれがどんな小さなことに幸せを感じるかを知ることができ、とても和やかなスタートとなりました。
e.「ウェルビーイング」と経営の未来
その後、カズさんからの講義が始まりました。テーマは「ウェルビーイング(well-being)」。現在、多くの企業で最も注目されている経営指標の一つです。カズさんは、顧客や従業員の満足度を重視する「満足」が部分的な指標であり、より大きな概念である「幸福」(well-being)が経営の最上位指標と説明しました。
「幸福」とは単に一時的な「happy」ではなく、心・体・社会のバランスが取れている良い状態のことを指します。カズさんは「経営とは営みを続けること。そのために最上位の目標として『幸福』を追求する必要がある」と強調しました。これまで経営で「心」が軽視されてきたことを振り返り、「心の幸福」を取り入れることが組織や企業の持続可能性にとって不可欠だと語りました。
f,グループワーク:「ウェルビーイングを軸に振り返る」
その後、グループワークが行われ、参加者が「ここ1か月、自分が会社や組織で実践したことの中で、ウェルビーイングに貢献したと感じるものは何か?」というテーマで意見を交換しました。
経営者からの話➀「意見を言いやすい場作り」
「職場でトラブルが発生した際、よく声を上げる従業員を抑え込んでしまったことがあります。しかし、結果として新たな問題が発生してしまいました。この経験から、意見を抑えつけるのではなく、むしろどんどん意見を言わせる環境を作る必要があると気づきました。現在、そのような意見交換の場を設けようとしています。」
この意見に対しては、他の参加者からも「組織の中で自由に意見を出し合うことが、ウェルビーイングの実現に欠かせない」と賛同する声が上がりました。
経営者からの話②「心の位置を少し高く保つ」
「第1回の探求塾を受けて、『心の置き方』を意識するようになりました。以前よりも心を少し高い位置に保ち、辛いことがあっても『いつか心の位置に現実が追いついてくるだろう』と前向きに捉えることができるようになりました。また、職場の仲間たちに『一緒に仕事できて良かった』と思ってもらえるような存在になりたいという気持ちも芽生えました。」
この意見に対しては、「心の置き方が上向きになることで、日々のストレスを軽減できる」という意見も出ました。心の余裕が、周囲の人々にも良い影響を与えるという共感が広がりました。
g.「目的・目標」とは?ウェルビーイングとは何か?
グループワーク後、カズさんから「ウェルビーイングや顧客満足は目的や目標ではなく、結果として表れているのではないか?」という問いかけがありました。
この問いに対して、学生からは「ウェルビーイングは結果ではなく、あくまで視点である」といった意見がありました。「ウェルビーイングは目標ではなく、常に良い状態を目指すための基準のようなもの」という捉え方です。一方、経営者からは「良い経営環境を作るためにはウェルビーイングや顧客満足が不可欠であり、これらを目指すことが経営における重要な要素だ」といった意見がありました。
さらに、カズさんは「目的」と「目標」の違いについて説明しました。
目的は、本質的で定性的な到達点であり、目標は目的に向かうための定量的な手段やステップ、というものです。
参加者からは、「目的と目標が混同されがちだが、それぞれに意味があり、どちらも重要だということが理解できた」という意見が出ました。「目的を明確にし、目標を達成するプロセスを大切にすることが、組織全体のウェルビーイングに貢献する」といった気づきも得られました。
h.感性が自己認識力に必要?
最後にカズさんは、自己認識力における感性の重要性について話しました。一般的に、自己認識力というと「考える」ことをイメージしがちですが、カズさんによると本当の出発点は「違和感を感じる」ことだといいます。具体的には、頭で論理的に考える前に、感性を通じて違和感を捉えることが重要であり、これが自己認識を深める第一歩となります。
この違和感を感じやすくするためにも、一息つき、一休みすることを大切にしましょう。
i.ひとと事業
〇今後の「ひとと事業の探求塾」の考え方
続いて、カズさんは「ひとと事業の探求塾」における組織・事業・人事の考え方について話をされました。
社員とお客様を繋ぐ役割を担うのが「会社」という組織であり、そこでは「事業」を通じてお客様に価値を届ける仕組みが作られています。この仕組みによって生まれた収益が社員を支えるという循環が成り立っています。
その中で、社員と事業を繋ぐ重要な役割を担うのが「人事」です。カズさんは、「ひとを活かして事を成す」こと、そして「事を通じてひとを育てる」ことこそが、人事の本質だと語りました。
〇バランストスコアカードを活用した視点
さらに、事業運営を多角的に理解するための手法として「バランストスコアカード」が紹介されました。配布資料をもとに説明されたこの考え方では、事業を次の4つの視点から分析することが提案されました。
従業員の視点(働きやすさや満足度)
業務プロセスの視点(効率性や成果)
お客様の視点(顧客満足度や信頼)
財務の視点(収益性や持続可能性)
これらの視点を有機的に繋ぎ合わせることが、事業や組織を設計する鍵となります。そして、その繋ぎ役を担うのが経営者であり、社員とお客様を繋ぐ「組織」や「事業」の設計について深く考える必要性が語られました。また、「何のためにやっているのか」「今の流れで良いのか」「どんな意味があるのか」といった問いを立てることで、自己認識力を高め、事業の意義を再確認することができると述べられました。
j.ひとと事業の探求塾で目指すこと
探求塾では、社員が自分の視点から事業を見つめ直すこと、あるいは事業やお客様の視点から自分自身を振り返る機会が提供されます。このように、異なる視点を行き来することで新たな発見や学びが生まれる場を目指しています。
さらに、探求塾ではゲスト講師との交流を通じて、地域、家族、地球といった広い枠組みの中で「何が本当に大切なのか」を考える場を提供しています。これにより、個人や組織が短期的な利益だけでなく、長期的で持続可能な価値を創造する方向性を模索できると考えられています。
最後に、カズさんは「感じてみて、考えてみて、繋ぎ直して、やってみて」というプロセスの重要性を繰り返し語りました。このプロセスを実践する場として、この探求塾があることを伝えました。このように、感性と行動を繋ぐ場を通じて、組織や事業、個人の成長を促すことが目標となっています。
k.感想の共有と気づき
最後に参加者たちは、今回の探求塾を通じて得た気づきを共有しました。
・社員とお客様の関係性の理解
「社員が提供するサービスやモノを、社員自身が愛を持って理解することが大切」との気づきがありました。
・自分の姿勢への気づき
「自分ができることをしよう」という姿勢を見直す良い機会となり、「自分の気持ちを大切にしつつ、仲間を頼りながら進んでいこう」という意見も。
・休み方やリフレッシュ法の共有
日常の中で「寝る前に考えすぎて眠れない時の対策」や「お互いの休み方」について意見を交換する場面も見られました。
l.次回のお話
第2回の探求塾は、「幸福」と「目的・目標」をテーマに、経営や組織運営について深く考え、多くの気づきと学びを得る場となりました。参加者同士の対話を通じて、「視野を広げ、自分自身や事業を見つめ直す」という探求塾の意義を再認識する時間でした。
次回の探求塾では、宇宙ベンチャーで取締役を務めた経験を持つ金澤誠さんをゲスト講師にお迎えします。金澤さんには、お客様や事業に意識を向けすぎた結果、社員や組織、さらには経営者自身のことを十分に考える余裕を持てなくなり、最終的にバーンアウトに至ったというご自身の経験から、人と事業についてお話しいただきます。
このお話を通じて、視点の置き方を見直し、その幅を広げるためのヒントが得られるでしょう。また、新たな発想やアプローチを学ぶ貴重な機会となることが期待されます。ぜひご参加ください。
月に一度、自分たちの考えや取り組みを振り返る時間としても活用いただけるかと思います。
参加のお申込はこちらから:https://forms.gle/BjeKNEQrtAhG1bXVA