文脈棚との出会い
それとの出会いはある書店だった。頭の芯が痺れるような衝撃だった。
「何ここ!本同士が引き立てあってる!すごいマリアージュしてる!」
私と文脈棚との出会いだ。
文脈棚というのは、ジャンルにとらわれず、共通のキーワードやテーマに添って陳列した、いわば意味の棚である。本をよく知る目利きでないと陳列は難しく、私の敬愛する松岡正剛氏もその取り組みを推している一人である。
何が衝撃だったかって、そこには紛れもなく、世界があったのだ。
世界というよりは地球があったというほうが近いかもしれない。世界は丸く、全ての情報や物語や意味が繋がりあっているということが明確にわかる棚だった。これまでは整然と静かに並んだ知が当たり前だった中で、知が立体的に並び、訪れ人に本の方から問いかけてくるような気すらした。
例えばこんな感じ。
遠藤周作の「沈黙」が置いてあれば、普通であればその横は彼の作品や日本人小説家の小説が並びそうなものだ。
しかし、ジャンルではなく意味を考え、例えば「聖☆おにいさん」や「旧約・新約聖書」「日本の思想」「天皇と日本人」などの漫画・歴史・哲学・宗教ジャンルを混ぜこぜにして、映えな感じで置いてみたりする。
そうすると、一見関係のなかった本たちが「日本“らしさ“と宗教」なんてキーワードで繋がりはじめはしないだろうか。
「羊たちの沈黙」「沈黙の春」「沈黙のパレード」と沈黙キーワード縛りで置いてあっても面白いかもしれない。サスペンスに自然科学、人気小説などが一堂に会するのだ。
そうすると、本棚を歩く楽しみも増える。あれ…なんでこの本…ああそうか!と知のワープをしながら興味を広げていくことが叶うのである。
そういえば、ふらっと遊びに行った目黒の教会には聖書に並んで聖☆おにいさんが置いてあって「えー、これ神さまに怒られない?」と言ったら、「大丈夫、そんなことで怒るほど神の心狭くないから」って神父様が仰っていて、笑ったこともあったっけ。今思えば確かに、関心を持つきっかけとしてありだったのかもしれない。
「書棚を編集するとは、世界を編集することである」
と松岡正剛氏は言った。嫉妬も出来ないくらい素敵なコピーだと思う。
確かに書棚は個人の世界観の編集であり、その造詣が深ければ深いほど世界に近づくのだと思う。
文脈棚が気になる方は、こちらの本がおすすめ。
『松岡正剛の書棚ー松丸本舗の挑戦』 著.松岡正剛
実際に体験するにはこちらのミュージアムもとてもおすすめ。
他にも素敵な文脈で配架している図書館はいくつかある。
いつの日か「文脈棚と言えばテラソ」にもなっていきたい。
2021年5月から、特設の館長棚で文脈づくりに挑戦しています。まだまだ勉強中。
↑2021.5.15追加しました。
是非、あなたの文脈を教えてください。
〜出てきた本・漫画・雑誌・映画たち〜
『沈黙』著.遠藤周作/『聖☆おにいさん』作.中村光/『旧約聖書』『新約聖書』/『日本の思想』著.丸山眞男/『天皇と日本人』著.ケネス・ルオフ/『羊たちの沈黙』著.トマス・ハリス/『沈黙の春』著.レイチェル・カーソン/『沈黙のパレード』著.東野圭吾/『松岡正剛の書棚』著.松岡正剛