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恐喝者 (短編小説)
松本清張傑作短編セレクション、2本目。大雨で筑後川が氾濫し、その機に乗じて脱獄した男・凌太は図らずもある女性の命の恩人となる。後日雇い主の妻君として再会した彼女と、思わぬ方向へ人生が動いてゆく。
と書くと、成功物語のようだがそうではない。そんな甘い話にしないのが、松本清張大先生なのだ。
凌太は根っからの悪人ではない。むしろ素直で普通の人間で、だからこそ情がわいたり、その情ゆえに詰めが甘い。
凌太に命を救われた女・多恵子も同様に、普通の女だからこその行動を取っただけだ。責められる要素は無いだろう。
そこに小悪党が絡まなければ、もう少しマシな結末になったのだろうか?
何にせよ、この小説はラストが凄い。というか、3000m走の残り50mでラストスパートを掛け、3人抜いて1位でゴールに突っ込むような、鮮やかな幕切れが見事。
物語におけるオチの大切さを痛感する、名人技である。