テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム『終りに見た街』 (ドラマ テレビ朝日)
山田太一の原作をクドカン脚本でドラマ化!
それだけでもオオーッなのに、君ゆきの奥智哉くんが出るなんて、絶対見なきゃ♡
そんな浮つきまくりな私の気持ちは、ラスト5分で粉々に破壊されました。原作も読んでいないし、過去のドラマ化も見ていない、全く白紙の状態でこのドラマを見て本当に良かったと思う。
勝地涼、堤真一、そして三田佳子ら芸達者が脇を固め、田辺誠一や塚本高史、神木隆之介、西田敏行、橋爪功らクドカンドラマの常連がチョイ役で登場する豪華な布陣。そんなキャストに負けない骨太かつ強い反戦テーマを漂わせた、素晴らしいドラマだった。
2005年版、山田太一自らによる脚本ドラマも見て比較したくなった。なぜなら今作は、インスタグラムやYoutuberの存在を効果的に使っている。インスタの登場は2010年頃なので、山田版ではSNSや多様性など今の流行りは出てこないはずなのだ。
最も印象に残ったのが、ラスト前。
勝地演じる寺本が「なんだかねー、ミサイルやなんやかんやで、外は大変なことになってますけどぉ」と言いながら、呑気にワイン飲みながらインスタライブらしきものをやっているシーン。
廃墟の中で左腕を失い、瀕死の状態の田宮(大泉洋)の側に落ちたスマホ画面から、そんな能天気な映像が流れるのだ。
これはそのまま今の私たちではないか!
ウクライナやガザの戦況をテレビで目にして胸をいためつつも、バラエティ番組に爆笑し、大リーグで活躍する日本人選手情報に一喜一憂する。
マイナンバーという、戦前の国民登録同様な制度が静かに進んでいるというのに、何の危機感もない。
兵隊が戦地で戦うシーンは皆無だった分、「パーマネントはやめましょう」だの、国のために命がけで闘おうという国民統制的な描写が際立っており、まさに市民目線の戦争ドラマだった。
クドカン脚本だから、きっと明るく楽しいエンディングに導いてくれるだろう。
そういう甘い期待をぶち壊した展開そのものが、戦争に対する私たちの意識の甘さそのものへのクドカンからの答えではないだろうか。
また、ラストで幼女を背負う奥くんのシーンは「火垂るの墓」を彷彿とさせるもので、こちらにも反戦のメッセージが込められていたと思う。
反戦の意識だけでは戦争を防げない。
どうしたら良いのか、どうすべきか、深く考えさせられる秀作だった。
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