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「ほら男爵 現代の冒険」星新一
星新一は有名でしょう。
誰もが小学生の頃にならっているはずの有名作家。
作品のスタイルはショートショート、多くても5ページ程度の長さで物語が完結するスタイルの作品。
ショートショートといえば星新一というぐらいの大家。
世にも奇妙な物語でも、何度も原作として使われており、一時NHKでも星新一名作劇場みたいな10分くらいの番組もやっていた。
「おみやげ」という作品が、小学生3・4年のころの国語の教科書に載っていた。
宇宙人がUFOで地球に降り立つ、だが地球はまだ知的生命体が発生したばかりで、科学技術を伝えようとしても理解できない。
なら後世に伝える為にと、おみやげとして高い技術の数々を置いて帰る。
そのままだと、価値をわからない原始人に破壊されてしまう為、その技術を理解できるぐらい文明が進歩しないと開けられない装置に入れておく。
それから時代は進み、核実験が行われて異星人からのおみやげは粉々になってしまう、というオチ。
このように社会への風刺なども取り入れつつ、短い中で見事なオチをつける作品を量産してた。すごい人なのだ。
「おーいでてこい」「ブルギさん」「ご依頼の件」「盗賊会社」などが印象に残っている。
そんな星新一、ショートショートよりも長い作品も出している。
それがこの「ほら男爵 現代の冒険」だ。
4編からなる短編集。
ほら男爵は有名なドイツの実在の人物で、ミュンヒハウゼン男爵という。
彼の奇想天外なほら話が、「ほら男爵の冒険」としてまとめられている。
主人公はその子孫という設定。
様々な奇想天外な経験をするが、名前を名乗るとほら男爵の子孫ということで誰からも信頼されない(笑)
ジャングルを冒険する
現地人はライオンに食われない、なぜかというとみんな外出するときは苦い汁を体に塗る、何世代も苦い体をライオンに食わせたから現地人はライオンに襲われない。
文明国だって、人が轢かれないと信号が出来ないから一緒だ。とか。
地底を冒険する
地下の偽札工場に行く、偽物だらけの世の中、おかねも偽物を使うべきだという作業員たち、ところが偽の定規を使ったせいで大きさのちがう偽札を作ってしまう。とか。
海洋を冒険する
神にノアのバックアップとされた一族が箱舟で漂流、陸につけないと迷っている。
ノアの子孫は戦争ばかりの性悪だらけ、もうちょっとすれば人類は滅亡するから、人のよさそうなあなたたちがもう一度人類やり直して。とか
砂漠を冒険する。
王宮にパチンコが大流行、ハーレムの美女が払下げられている。とか
星新一らしく現代社会への風刺に満ちていて、非常に黒い笑いを誘う作品。