「皇国の守護者」佐藤大輔/伊藤悠
漫画の紹介、というか漫画化の紹介。
全5巻。
原作があって、その一部を漫画化しているのが本作だ。
作者も、書いている漫画家も馴染みはなかった。
読んだきっかけは、田中芳樹の戦記ものに飢えていたからだ。
「銀河英雄伝説」「アルスラーン戦記」「マヴァール年代記」などなど、戦争を戦略・戦術の面から描いた作品が大好きなのだが、最近そんな作品をあんまり見かけない。
銀河英雄伝説の新アニメ版はいいところで終わっちゃうし。。。
そんな時に暇つぶしで入った漫画喫茶で見つけたのが本作だ。
面白すぎて、無料のソフトクリームが溶けてしまうほど夢中になった。
戦記物は、圧倒的な戦力差を奇策を用いて覆すのが醍醐味なのだが、本作の魅力はそれよりも主人公のキャラだった。
主人公たちは皇国と呼ばれる日本によく似た国の兵隊。
大砲・ライフル銃・騎馬、航空機は出てこない。
時代的には第一次世界大戦ごろといった感じ。
主人公は北海道のような北の果てに駐屯しているのだが、ロシアっぽい異国から攻め込まれる。
無能な上官の無謀な突撃命令によって壊滅的なダメージを追う本隊、主人公は戦死した上官の代わりに部下を率いて撤退を指揮する。
しんがりという大役を任せられ、軍と民間人を本土に逃がすために奮闘する話だ。
そんな戦いの中、主人公のふるまいや思考が非常に魅力的なのだ。
冷酷に無能な中隊長とその取り巻きを見捨て、部下に非情な命令を下し、ときに民間人を囮に使う。
仲間を死に向かわせるとわかりつつ鼓舞する。
一見堂々と冷酷に、だが論理的に判断を下すように見えて、実は本人は怯え・恐れを必死にこらえながら対応している。
その非情な戦略と葛藤がガチで面白いのだ。
しかも本作には不思議な設定がある。
魔術のようなものが出てくる。
超能力で通信をする兵が出てきたり、龍が存在したり、ちょっと独特な世界観が描かれる。
また、血のつながらない姉に劣情を覚えたりなど、どろどろした人間関係も少しだが描かれる。
そんな背景の中、圧倒的な負け戦が描かれる。
本当に地獄のような敗走、しかも極寒の中、絶対に勝利が見込めない状況下で主人公の率いる中隊がいかに戦うかを見て欲しい!!
小説では、この5巻分はほんの一部で、もっと壮大な物語が描かれるらしい。
主人公のこの泥臭く、人間臭い様子も存分に描かれるとのこと。
いつか小説版を読んでみたい。
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