「夏と花火と私の死体」乙一
乙一は”おついち”と読む。
17歳で作家デビューしたすごい子だ。
きっかけとなったのは少年ジャンプが主催している文学賞を受賞したこと。
受賞作が本作、いわばライトノベルだね。
その後ミステリー小説や青春小説など、いろいろな作品を出していてどれも良作なのがすごい。
中田永一という名義で出した「くちびるに歌を」という小説は映画化されており、新垣結衣が主演でいい味出してた。
ロングの新垣結衣もいいけど、やっぱりおじさんはリーガル・ハイの時のショートカットが好きだなぁ。
合唱部を舞台としながら、心に傷を負った教師や今まさに心に傷を負いそうな状況にいながらも、しっかりと前を向くようになる子供たち、彼らの様子がアンジェラ・アキの歌に合わせて描かれる、感動の映画なのだ。
なんでこの映画をテレビでやらないのか!!
放送して、その後も何度も再放送すべき作品だよ。
話を戻す。
本作は非常に変わった作品だったが、ミステリーというかサスペンスというか、どこか不気味な読後感を残す作品だった。
突拍子もない設定だが、途中で手に汗握る展開もあり、きちんとエンターテイメントもしていた。
あらすじ。
なんと主人公はいきなり殺される。
小学校3年生の女の子。
友達のお兄ちゃんがちょっと好き。
でも友達の女の子は自分のお兄ちゃんがとにかく好きで、兄弟で結婚できないことに不満。
もちろん主人公がお兄ちゃんのことを好きなのも気に入らないので、殺しちゃう。
小学生が殺し殺されするのだ。
こっからが面白いのだが、主人公が死んでも視点は変わらない。
死体となった主人公の目線でストーリーが展開するのだ。
殺した友達の女の子は、お兄ちゃんに相談する。
うっかり事故で殺しちゃった、どうしよう?と。
で、このお兄ちゃんも小学生だと思うのだが、肝が据わっているというか、倫理観がぶっ飛んでいるというか、死体を一緒に隠そうと協力してくれる。
で、小さな村を死体を隠すために移動するのだ。
この兄が思いを寄せているのが、アイスクリーム工場で働いている美人の従妹。
同じ村に住んでおり、顔見知りなので、ちょいちょい遭遇してばれそうになるからハラハラドキドキ。
ってなんで隠される死体がハラハラしてんだよ、という奇抜な話。
死体・友達・その兄・美人の従妹、たったこれだけの登場人物と、話は死体を隠すという1点のみ。それなのに読ませるんだ。
どんなにライトに描いても、小学生を登場人物にしたとしても、ドロドロな人間関係や血みどろのシーンが出てこなくても、見事にぞっとする作品となっている。
素晴らしい。
こんな作品を書く作者やべぇんじゃないかと思っていたが、前述したように「くちびるに歌を」みたいな作品もある。
なんか一番作者が。。怖っ!!