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「ゴールデンボーイ」スティーヴン・キング

昆虫は3つの体、頭・腹・尾で出来ていて、足は6本ある。
これが昆虫と定義される条件だ。
なので、アリは昆虫。
これを頭・腹・尾と足6本と9個に分解する。
子供が無邪気に行う残酷な所業だ。
だが、普通の人間は昆虫で終わる。
昆虫は無機質な感じがして情を感じないからか、無慈悲な行いが出来たとしても、これが哺乳類となるとまた違う。
ハムスターのモフモフとつぶらな目を見て、残酷な振る舞いが出来る人はあまりいない。
流すのも自分と同じ赤い血だし。
でも出来る人がいる。
エスカレートして人間にそれらを行う歪んだ人間まで。
個人レベルで発生し、時に報道される。

これが国や政府の単位で行われることがある。
虐殺。
戦争という狂気が人の残酷さを増幅させるのか、いくつも例がある。
一番有名なのはナチスドイツによるユダヤ人の大虐殺だと思う。

これらの事象は目を背けたくなるのだが、その大きな闇ゆえに人を惹きつけるという部分もある。
どうしても闇をのぞき込んでみたくなるのだ。
その心理をさらにエスカレートして書いたのが本作だと思う。
さすが恐怖の帝王、スティーブン・キング。

本作のあらすじ。
高校生の主人公はふとしたきっかけで一人暮らしのおじいさんと知り合う。
頭のよい主人公は老人がもとナチスドイツの人間だと言うことに気づく。
で、密告しない条件として虐殺の詳細を語るように強いるのだ。
少しずつ老人に蘇る冷酷無比な性質と、どんどん増幅する少年の心の闇が描かれる。
そして事件へと発展していく。
という内容。

若者と老人、過去にしたものとこれからしたいと思っている人、この奇妙な組み合わせが闇落ちしていく様子が非常に怖い。
そして本作中にまったく”光”となる人物が出てこないところも、人間の恐ろしさが強調されていてすごいインパクトなのだ。
魔物・超能力、そういったものをよく描くイメージだが、人間の闇だけでも恐怖を与えることが出来るのだから、キングはすごいと思う。

中編2作が収録されていて、もう1つは「刑務所のリタ・ヘイワース」、有名な映画「ショーシャンクの空に」の原作だ。
これも名作。
刑務所もののキングも読める最高の本。


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