「象と耳鳴り」恩田陸
こんな話を聞いたか、読んだか。。
恐竜の化石について信憑性が無い、という意見があるのだと。
同じ場所で発掘したことで、同個体の骨という前提・「生物の構造」という前提を元に、はまる骨をはめて、生前(?)の姿を想定している。
たまたま合致したからであって、本当は複数個体の骨をつなげてしまっている可能性もあるのでは、現在の生物とまったく別の構造をしている場合、今博物館で展示されているような、みなが想像する姿ではないのではと。
実際、別の生物の骨をつなげて「新種発見」と報じられたが、後でそれは間違いと訂正されたものもあったとのこと。。
推理小説の中で「パズルのピースがはまった」的な表現をされるのを何度か見てきた。
フィクションの中では都合よくそれが「真実」で事件は解決していくが、上述した恐竜の化石のように、パズルが偶然にしてはまっただけで、足りないピース・余計なピースが実は存在し、本当はまったく違う姿を見せることもあるのでは無いか、なんてこの小説を読んで思った。
本作品は短編集、表題作もそうなのだがリアルタイムで事件が起こることはない、「安楽椅子探偵」というジャンルのものだと思う。
主人公は退職した判事で、彼の記憶や周りの人間の記憶・思い出、ふとした気づきを元に推理が進み、事件・事態の様子が見えてくる。
面白いのは、推理した本人達も読んでいるこちらも、それが真実かどうかは確信を持てていない。
裏付け捜査が行われるわけではないし、元判事といってもただの一般市民が推理するだけなので、実際に逮捕だの真相を暴くだのと行動に移ることはない。
ここで実はこんなことがあったのでは?あの人は実はこんなことを思っていたのでは?とその場にあるピースで推理されるうすら寒い想像に震えるのみの結末。
その事件が本当に起こったかわからない、はまるものをただはめてみたらその姿になった。
そう「恐竜の化石」。
自分的には「給水塔」という話が好き。
一番うすら寒かった。
なんか今日文章が固い気がする。。