「炎蛹 新宿鮫5」大沢在昌
事件を追うのは警察や探偵だけじゃない。
麻薬取締官、通称「マトリ」。
厚生労働省管轄の組織で、警察同様に捜査権・逮捕権があるという。
法律で「特別司法警察員」と認定された立場の人は逮捕が出来るのだ。
例えば海上保安官、漫画「海猿」にて海上保安官が捜査をするエピソードがあった。
他には、労働基準監督官も実は逮捕権をもっているらしい。
無茶な残業とかさせたら逮捕されちゃうのかな?
などなど、警察の活躍も読んでいて面白いが、そういった警察ではない立場の人間が捜査等に係るという趣向もまた面白い。
本作は上記のように、警察ではないが逮捕権や捜査権をもっている人物が主題!!というわけでもないのだが、ある事情から警察と協力して事件にあたる人物が登場する。
以前紹介した新宿鮫シリーズの5作目、本作では主人公鮫島がかかわっている事件に植物防疫官の甲屋という人物が割り込んでくる。
実は殺された南米人の娼婦が、日本の稲に大打撃を与える害虫を持ち込んだ可能性があるというのだ。
鮫島は事件を、甲屋は害虫を追う。
二人とも自身の仕事に責任感を持ち、誇りを持って事件と対峙する。
そして、お互いを敬い合うような関係に。
一匹狼(鮫?)の鮫島が相棒とともに事件にあたるのだ。
甲屋は事件捜査が専門じゃない、荒事専門でもない。
筋肉むきむきの男でもない、普通の中年男性なのだ。
ただただ、自分の職務を全うする為、自分の国を守る為、全力疾走する。
かっこいい。
宮崎駿の「紅の豚」でもテーマアップされているが、人は見た目じゃない、その本質こそがその人をかっこよくみせるのだ。
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