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「RIKO 女神の永遠」柴田よしき

ある日テレビを見ていると、お笑い芸人の女性が言っていた。
”女芸人”って言われている時点で、全然女性が芸人をするってことが認知されていない、と。
確かにそうだ、女性がやると必ず”女”という冠がつく。
女流棋士、女芸人、女教師、女探偵など。
これはやはり、まだ人々の考え方が男性が基準となっているということなんだろう。
女性がそれを行うのは、レアなパターンだ、という考え方なんだろうね。
少年少女すらおかしな表現だと思う。
だって、少年という言葉には”男”という要素ないぜ。
青年も、青年のどこに”男”の要素があるんだ?
全部に男・女をつけるのが平等なんだろうか?うすっぺらな平等だけど。。

本作はミステリーだ。
ミステリーなのだから、事件とそれを解決する過程がもちろん主軸となるのだが、この物語には大きな軸がもう1つあって、それが”性差”だ。

主人公は”女”刑事。
彼女が男尊女卑の警察社会の中でもがき苦しみながら、”性”が深く関わる殺人事件を捜査するという物語だ。
主人公は同僚の警察官から非常に惨い目にあわされる、警察という本来なら法を遵守する、雑にいえば正義の味方であるべき組織なのに。
そんな傷を抱えながらも強くあろうとする主人公が魅力的だ。

正直、主人公の身に起こったこと、フィクションでもなんでも見るのが嫌なんだよね。
だからシリーズものなのに、シリーズ1作目である本作を読んですぐ売り飛ばしてしまった。
今、こうして書評を書いていると、その惨さも思い出すのだが、それでも気高く生きる主人公のことも思い出してきた。
また読もうかと思う。
シリーズ全部。
警察物という見方もあるが、女性が描く女性が主人公のハードボイルド小説、かっこいい。

ドラマにもなって、アニメ化もされている漫画「ハコヅメ」、なんども読み返すぐらい好きな作品なんだが、気になるとこがある。
主人公達が取り扱う深刻な事件は、殺人や強盗よりも圧倒的に性犯罪が多い。
痴漢・露出狂・婦女暴行・未成年者への性的ないたずら・性的虐待など。
作者が元警察官ということもあるので、この頻度は実際と同じなんじゃないかと。
世の中にはこれほど”性”に絡む事件があるのかと絶望する。
殺人などは、もちろん命の危険がある大変な事件だが、”性”犯罪は心を殺す事件だってのが読んでひしひしと感じられる。
世の中楽しいこと、素敵なことはいっぱいあるんだろうけど、こういうのを読むと世の中は汚物だらけだ、、なんて悲観してしまいそうになる。

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