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「それでも町は廻っている」石黒正数

漫画の紹介。
全16巻。

以前「菫画報」の紹介を書いた。
女子高生が主人公で高校や彼女の周辺を舞台に、ちょっと不思議な話がコメディテイストで描かれるというもの。
いくぶん幻想的な雰囲気のある一話完結の物語。

全4巻で、このくらいでちょうどいいような少し物足りないような感じだった。
そういうストーリーを、もっと読みたい!!という思いが募ってた時に見つけた本作「それでも町は廻っている」。
大好きな作品の1つになった。

主人公は女子高生の嵐山歩鳥、彼女がアルバイトするメイド喫茶や周りの商店街、高校や友人との関係の中で描かれる少し不思議なストーリー。
こう書くと前述した「菫画報」に似た感じかと思われるが、こちらは幻想文学というより、SF、ミステリーな要素が強い。

あらすじ。
主人公の嵐山歩鳥は女子高生、名探偵に憧れていてミステリー小説が大好き。
商店街ではマスコットキャラのような存在で、ラーメン屋・八百屋・魚屋・クリーニング屋・交番のお巡りさんなどなどから愛されて過ごしている。
子供のころから面倒見てくれた喫茶店「シーサイド」のばあちゃんが、急におかしなことを言い始める。
「最近、はやっているらしいじゃないか、今日からこの喫茶店はメイド喫茶だよ!!」と、で「あんたも今まで面倒みてあげたんだからメイドとして働きな」と。
そんなメイド喫茶に商店街の人や歩鳥の友人達が集まり、コメディを繰り広げるのだ。

好きなエピソードをご紹介。

歩鳥に片思いしている魚屋の息子の真田くん。
今も同じ高校に通っている。
男前でモテるのだが、歩鳥しか目に入らないからか彼女はいない。。
そんな二人が通学中のバス、歩鳥は徹夜でミステリー小説を読んだせいで、バスの中で寝てしまう。
真田の肩に頭をもたれかけさせて。
真田はその肩の幸福を噛み締めているせいで、バスが高校に着いても彼女を起こさず終点までいってしまう。
そして終点で学校をさぼって散策をするのだ。
で、歩鳥は下に弟と妹がいるから、特に他意はなく真田と手をつなぐ。
肩に続いて手と、真田にとっては幸福な1日になるのだ。
たったそれだけのエピソードなのだが、男子高校生のもんもんとした気持ちや心の揺れ動く様を面白おかしく描いていてすごい良いエピソードなのだ。
最後にこの感動を文章に残そう、と日記を書こうとするのだが、文才が無い為「嵐山と学校をさぼって遊んだ」としか書けない。
文章力を鍛えるために本を読もうと決意するとこも、なんかわかる、となった。
そんな青春ストーリーみたいな話もあるし、奇想天外な話もあり飽きさせない作品なのだ。

SFだと、宇宙人が攻めてくる話や歩鳥が自分が存在しないパラレルワールドに紛れ込む話などいろいろ。

切ない話あり、笑いころげる話あり、不思議な余韻が残る話あり、同じ舞台で行われる世にも奇妙な物語って感じ。
永遠に続いて欲しかったけど、終わり方が凄い良くて、これでよかったような。。とにかくいい作品です。

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