「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」麻耶雄嵩
いきなり最後の事件といわれましても、、しかもこれがデビュー作という、そもそもメルカトル鮎ってまともな名前じゃないじゃん!!芸人か!?テレビタレントか!?
なんのこっちゃなタイトル、タイトルからはなんの情報も読み取れない本作、後に短編集で大暴れする”銘”探偵メルカトル鮎のデビュー作でもあるのだ。
そしてもう一人の名探偵、木更津悠也のデビュー作でもある。
京都近郊の名家、今鏡家。
その今鏡家の当主に呼ばれて、助手であり推理小説作家である主人公とともに到達した名探偵の木更津。
ただ到達した時、すでに事件は起こっていた。
首無し死体、その首を発見したと思ったら別の首。
もったいぶった雰囲気で、人の体がおもちゃのように扱われる、日本のどろどろミステリーの現代版って感じだ。
木更津もメルカトルもいなかったら、明智小五郎でも出てきそうな作品。
ミステリーの中にはトンデモミステリーだのバカミスだのと呼ばれる作品がある。
定義が難しいのだ。
だって作者は絶対そういうつもりで書いてないんだから。
昔、ホラーについての評論でホラーとコメディは表裏一体だ、という説を読んだ。
衝撃の展開を突き詰めると笑いに近くなっちゃうのだと。
例えばさ、テレビから貞子が出てきたら怖いよね。
じゃあ電気屋さんに山ほど並んでいるテレビから一斉に出てきたら?
笑っちゃわない?
過ぎたるは及ばざるがごとしなのだ。
本作はそんなエピソードを思い出させた。
とんでもない展開と真相なんだ!!
その衝撃がすさまじく、初めて読んだ時は頭をガーンと殴られたような感じだった。
すげー作品だと。
で、冷静になるとバカミスなのか?と疑念がわいてきた。
ただ改めて本筋を振り返ってみると、いろいろな装飾をつけてとんでもない話のように見せているが、中身は非常にシンプルなロジカルミステリーだった。
それも上質な。。
こちらを惑わしまくり、ある意味とんでもないミステリーだった。