「解体諸因」西澤保彦
ミステリーには〇〇物がある。
例えば。。
密室物、一番有名なのがこれじゃないかな?と思う。
誰も入ることが出来ない閉ざされた部屋で死体がみつかるというもの。
自殺なのか?他殺なのか?
明らかに他殺な場合は、なぜ密室にしたのか?誰がそれが出来たのか?そしてそもそもどうやって密室にしたのか?
トリックのバリエーションも豊富で、推理小説の醍醐味が味わえる。
古今東西題材にされているジャンルで、名作が多数ある。
他にはアリバイもの。
アリバイ、日本語で言うと不在証明。
殺人が行われた現場、その時間にいるはずがないのだが、何らかのトリックで実は間に合っていたという話。
時刻表をうまく使う話が多くて、電車マニアは喜んで読んでいるのでは?
他にも「その時遠くにいました」の証拠写真にトリックがあったり、現代技術をうまく使ってトリックにしたりと面白い。
と、いうようにミステリーというジャンルの中にも細かいカテゴリーが存在するのだ。
本作はなかなか特殊、チョイスされたカテゴリーはバラバラ殺人だ。
バラバラ殺人は現実にも存在する。
人を殺すだけでなく、その死体を切断してあちこちに捨てるという、非常に猟奇的な印象がある事件、ものすごくおぞましいものを感じてしまう。
だが、京極夏彦の「魍魎の匣」にて、死体を切断している時に人は冷静だ、という論理が出てきたのを覚えている。
殺人は激情によって起こることが多い、逆に死体を切断するというのは身元がばれないようにすることが目的だったり、死体そのものを発見されないようにする為だったり、自身の保身の為であり冷静な思考で行っているという理屈だ。
これはなるほどと思った。
この「解体諸因」は死体をバラバラにすることに、ロジカルな理由をつける、それも様々な、非常に実験的な作品だった。
短編集で各作品でバリエーション豊かなバラバラ殺人が描かれる。
まず1作目について。
みなさん、これ分かる?
拘束されている人、柱を抱くような形で手を縛り付けられている。
この時、ロープで縛られているのと手錠をされている状態との大きな差異はなんでしょう?
読むと納得、この違いが真相へのカギなのだ。
他にもエレベーターの8階に乗って、1階についたらバラバラの遺体に!?
とか、事件とは言えないがクマのぬいぐるみの手が切り取られている原因は?とか、導入から面白そうな作品が目白押しなのだ。
そしてね、最後の作品が。。。すごいインパクトを与えてくれるのだよ。
芸達者だなぁ
ちなみに、探偵役として作者の人気シリーズ「タック&タカチシリーズ」の匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔が出てくるので、このシリーズのファンとしてもうれしい作品集だった。