【単巻5冊読書感想70】『スターメイカー』『鯨オーケストラ』『注文の多い注文書』『やみなべの陰謀』『中庭のオレンジ』
Kindle UnlimitedやBOOK☆WALKER読み放題の本が、今回、ない。
図書館本をひたすら読んでいるから、というか。
図書館の貸出期限と戦い、予約本が来るので困り、という連鎖がっ!
連鎖がっ!!!
一番の原因は、図書館に行くと最大限まで借りてしまう、貧乏根性。
サブスクを遊ばせているのも、勿体無いんですけどねー。
でも、読みたい本がサブスクにないこともあるわけで。
今回は3冊が吉田篤弘さんのローラーとなっています。
【1冊目】これは……小説……なのか? SFの原点!!『スターメイカー』
まず、すごく紙面が黒い!
改行が1.5頁おきくらいにしかない。
WW2が勃発する寸前、1937年に発表された本タイトル。
小説、とは言えない。
SF、ではある。
精神生物になってしまった主人公が、地球を出て銀河を巡り、他の知的生命体を観察していく。
で、他の知的生命体の仲間を得て複合的精神になり、銀河へ。
どんどん広がっていくのが、楽しい。
そして、最後に高みに登って「スターメイカー」=「神」にあう。
宇宙と銀河の全てがある。
どんどん広がって大きくなっていくのが壮観。
でも、最後の方は、眠くなった。
全能神に収束してくあたりはキリスト圏の影響が強すぎる。
しかし、何よりも。
いろんなSFの原点ここにあります。
アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』とか、グレッグ・イーガン『ディアスポラ』とか、ジョン・スコルジー『老人と宇宙』とかを思い出しました。
いろんな生命体もそうだし、優位者が下位のものを導くのもそうだし、宇宙戦争とかも。
宇宙戦争ものはあんまり読んでないな……。
ともかく、いろんなSF名作に影響を与えて、連綿と流れていると思う。
読むのは大変だけど。
SFが好きなら、ぜひ読破すべきな一冊です。
【2冊目】吉田篤弘さんローラー読破中!!『鯨オーケストラ』
吉田篤弘さんにハマっています。
……山田篤彦さんってお名前を間違っていまして、図書館で見つからない事件が。
というわけで、こちらは吉田さん、二冊目。
なんか、三部作の三冊目らしく。
登場人物がわかりにくい……。
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』が好みすぎて、こちらは……というのが正直なところ。
こっちが好きなのは、父子家庭という明らかな問題があるんだけど、それを表面化させずに、のんびりと時間がすぎて、「なるようにしかならん、それでもいいじゃないか」って思わせてくれる、その間合いというか雰囲気が良かったんですよね。
今回のタイトルは、その不穏がなかったので、あんまりピンとこなかったんだと思います。
雰囲気とかは似通っているので、全く楽しめないわけではないんだけど。
あれですね、初っ端の出会いがドンピシャすぎて、他のが違うように感じるやつ。
時々ありますよね。
ジム・トンプスンも『ポップ1280』が理想すぎて、他を読んでも超えてこなかったり。
それだけ、運命的な出会い、っていうやつなんでしょうけど。
皆さんも、運命的な本との出会い、経験されたこと、ありませんか?
【3冊目】吉田篤弘さんローラー読破中!!『注文の多い注文書』
こちらも、吉田さん。
というか、吉田さん夫妻と小川洋子さんのコラボ。
小川さんは『博士の愛した数式』で有名な方ですね。
まだ、読んだことないんだよなぁ。
『博士の愛した数式』より先に読むには、ちょっと色物すぎる気が……。
小説……かどうかは、結構、実験的だと思う。
でも、フツーに一般でも売れる一冊になってるの、まじですごい。
なんでも売っているお店に、小川さんが注文書パートを書いて、吉田さん夫妻が納品書を書く……という形式。
幻想的な雰囲気で、さらにブックガイドにもなっているという、素晴らしい一冊。
ありきたりな小説に飽きた方に、ぜひ手に取ってもらいたい一冊です。
【4冊目】電撃文庫の、昔の作品を読む!!『やみなべの陰謀』
ラノベヲタクであるのですが、中でも電撃文庫が中心でして。
昔々、中高生だったことは「電撃文庫、全部読みたい」と思っていたくらいで。
今でも、ノベルスができた当初、20世紀のタイトルが読みたくて。
というわけで、ハヤカワJAで再出版されたこちらを。
えーと、結構、ハードルが高くなりすぎてたかなって感じ?
時間SFとしては、まぁ、正直うーんと思うけど、文体が独特ですごい!
なんだろうな、言葉にできないので読んでほしい。
リズム感の良さ。
でも、描写はちゃんと長めにある感じで。
しかも、これが独特の笑いのセンスがあって。
今、『僕の血を吸わないで』を読んでいたりするのですが、ちょっと通ずるものを感じたり。
この時期の電撃だからこその文体だなーと。
で、解説が大森さんなんですね。
大森さん……。
5/14に『白亜紀往事』で大森さんの翻訳を読み、
8/9に『読むのが怖い! Z』でブックガイド対談を読み、
今回、8/24に『やみなべの陰謀』で解説を読んだわけですね。
大森さん、仕事幅広すぎません?
そっちに感激しちゃって、読了感上書きされてしまった笑
【5冊目】吉田篤弘さんローラー読破中!!『中庭のオレンジ』
というわけで、また吉田さん。
まず、装丁がすごくいい!
本のサイズってある程度決まってしまってるんだけど、絵本みたいにオーダーメイド感が溢れる装丁。
まず、手に取った瞬間、「何これ可愛い!」とテンション上がりました。
でも、その反面、「これは『それからはスープのことばかりを考えていた』とは違うタイプの本だぞ……」という予感もあって。
これは……創作童話になるのかな?
ただ、連作短編になっているところもあって、創作童話の雰囲気の小説、とも言えるかも?
まぁ、そんなジャンル分けは無意味かな。
さて、今回、吉田さんを三冊読んで。
この方は、良くも悪くも、挑戦的で同じような小説を書かない方なんだと。
同じような小説で飽きてくる作家さんもいるし、それは素晴らしいことなんだけど。
でも、同じようなのを読みたいことも、あります、よね?
とはいえ、素敵な装丁に包まれている、素敵な短編たちには大満足。
貸出期限が迫っていたので一気読みしたんだけど、
これは毎夜一話ずつ寝る前に読む……という読み方をぜひしてほしい!
可愛い装丁のこの本を、寝る前に丁寧に読む。
それだけで、どんな日であろうと素敵な日になること間違いなしです。
というわけで。
今回の五冊はいかがでしたでしょうか?
それでは、また、次の五冊まで。
みなさまの読書の充実を祈りつつ。