酉島伝法『るん(笑)』
今回の本はこちら。
こ……。
これは、ヤベーよ……。
すごく楽しみにしてたんですが、休みの日にわざわざ読む本じゃなかったかも……。
そう、胸糞です。
やるせなさすぎ。
水質汚濁をする川の牡蠣を、姿の見えない龍の鱗として育てる。
そして、それを飲食水にわざわざ自ら混入。
善玉乳酸菌を培養しているから、風呂は入れ替えずに茶色く濁っている。
乳幼児の頃から整体を受けさせ、今時の子どもは歯が生え変わらないという。
「病気を捏造して治療代をぼったくる」病院には行かず、クスリの売人「ヤクザイシ」に何万円も払って解熱剤を手に入れる。
「猫病」によって猫を愛玩したくなるから、猫は絶滅させる。
「科学」を唱えれば、警察によって排斥される。
そんな世界では、もちろん建築はいつまでたっても終わらない。
ありとあらゆる似非科学と陰謀論を共存させ、日本を飲み込ませたら、どうなるのか。
何より、もちろん、健康被害が出るよね。
という、読んでいて救いのなさすぎる3編が描かれています。
この、毒々しい表紙は「黒」という似非科学や陰謀論が広がって世界を埋め尽くそうとしている様を表しているのだと思う……。
何が胸が悪いかって、登場人物の中で一番ヤバい知識をばら撒いている奴が、健康体そのもの。
で、たいして肯定的ではない周りが割を食いまくってるってこと。
最初は、どこにでもいるようなうだつの上がらない三十歳男性。
おそらく健康被害が広がりすぎて「38度は微熱」となっている社会。
なので、彼はだるい体を引きずって龍に餌をやる地域行事を敢行し、仕事にも行く。
出てくる登場人物は、全て様々な似非科学や陰謀論に染まっている。
主人公はけしてそれを肯定していない。
のに、病院には行こうとせず、正気を疑う民間療法の保養所にいって終わってしまう。
で、次は、1編目の男性の同棲彼女の母親。
彼女は健康診断をこっそり受け、結果、癌が発覚。
なんとか入院に成功している。
が、安心してはいられない。
健康的な病院食は、娘に汚染され、そして夫に退院させられてしまう。
そこからは、似非医療の治療ラッシュ。
もうページをめくるのが辛い。
そして、最後。
もう無理。
だって、次は2編目の老人女性の孫、小学生が主役なんだもの。
無茶苦茶な日本でも、変な通学中の老人を避け、不審者はどうのと教えられるから近所の老人女性に挨拶するか悩み、苦手な教科があって、なんだかんだ言いながらクラスメイトとは友情はある。
でも、その「小学生あるある」がめちゃくちゃ歪んでいて。
誰もが似たような経験におもいあたるからこそ「似非科学や陰謀論に飲まれた日本、ヤベー」となるに違いない。
つーか、似非科学と陰謀論が詰まりすぎて、全部のネタが理解できないんですが……?
個人的に、一番の謎は3編目の少年のいとこらしき存在。
現実的に叔母(=1編目の同居彼女)は浮気して子どもを産んでいたのか。
年齢が少年と同じ歳くらいとなれば、イマジナリーフレンドの方が納得いく気はするけど、彼の知らないことを教えてくれているあたり違う気がするし。
で、三編目の最後のオチが薄寒い。
だって、事故で死んだ子を「生きているように見せてる」としか思えなくて……。
発想は面白いけど、救いがなさすぎる。
そういう意味で、お勧めできない小説です。
でも、同じ世界観で科学側の人たちの続編を見たい。
病院勤めの医師&看護師夫婦の奮闘とか、理系大学教授がヤバい思想に侵された人文学教授から大学運営を守ろうするとか、まともな官僚がヤバい思想の政治家たちを転がすかとか、科学的な教育は受けてないけどなんとか全てをやんわり跳ね除けて健康的な育児をしようとする夫婦とか。
さて、結構とりとめのない感想になってしまいましたが。
作家さんの実力だけは確かなので、他の小説も手に取ってみたいと思います。
この本を手に取られるかは……みなさんの精神的健康に委ねつつ。
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