【単巻5冊読書感想㉘】『ブルシット・ジョブ』『人口減少時代の土地問題』『話し方に自信がもてる声の磨き方』『電源防衛戦争』『殺されても聞く』
20日現在、全然冊数を読んで無い。
だけど、こんなに濃い本を読んでいたら仕方ないな、ってくらい、濃厚な本が多い。
というわけで、感想も六千文字を超えてしまいました。
もはや、一冊ずつ書いたほうがいいんじゃないかという分量ですが、興味のあるタイトルだけでもお付き合い願えれば幸いです。
【1冊目】どうして無い方がマシな仕事が存在するのか? 資本主義の矛盾点『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
Twitterかな、で見て前々から読みたいと思っていた本。
知らない間に地元図書館に入っていたようで、借りてきました。
いやー……内容が厚い!
「クソどうでもいい仕事」というのは、お偉いさんをヨイショするだけだったり、最初からちゃんと設計していたら発生しないミスをフォローしていたり、仕事の時間を潰すためとしか思えない書類仕事しかなかったり……。
そして、なくなっても誰も困らないどころか、「人類に貢献する」とまで思える仕事。
さらに、「なくなったら絶対に困る」清掃業とか工場勤務とかよりも、何故か高収入!
なぜ、そんな仕事が蔓延しているのか?
と、文化人類学者が、資本主義への反体制とも言えるくらい鋭く切り込んでいく。
日本でも「保育士さんの給料が低い」「実際に地域住民を確認する民生委員がボランティア」なんて問題があるんだけど、それに答える一冊になっている。
結構、反政府的というか、陰謀論だって思う人もいるかもしれないけど、わたしは「マジそれ!」って思想的にフィットしました。
内容もページ数もかなり分厚い本ですが、おすすめの一冊です。
【2冊目】『人口減少時代の土地問題 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
空き家問題とか海外資本家が土地を買うとかなんか社会問題とかニュースになっている。
で、実際は何が起こっていて、何が問題なの?
というのを、一般にもわかるように順を追って解説した一冊。
専門性を持ってこの問題を取り扱った初の書籍だそうで、決して分かりやすく易しくという本ではないのが難点。
ではありますが、実害や、社会的・制度上の問題を整理してあるので非常にためになりました。
ちなみに。
令和5年4月から、段階的に法改正がされているそうです。(https://www.moj.go.jp/content/001369525.pdf 法務省民事局「所有者不明土地の 解消に向けて、 不動産に関するルールが 大きく変わります。」)
「都会に出ているor田舎からは転出しているけど、そのうち実家の相続問題が立ち上がる」
「田舎の土地を相続したけど、そもそも具体的な土地も知らない」
「代々の土地に住んでいるが、登記が自分になっていない」
なんて土地問題がそのうち持ち上がりそうな方、抱えている方は、法務省民事局のパンフレットを一読しみてはいかがでしょうか。
さて。
本タイトルで取り扱われている実害で、いちばん納得が大きかったというか、「謎が解けた!」と思った部分だけ紹介したい。
東日本大震災後、仮設住宅や高台への移転が大変に遅れていた。
これを覚えている方も、どうしてだろうと疑問を持った方も多かったと思う。
土地問題が密接に関わっていた。
まず、「登記」の問題。
その土地は誰のものですよ、と明言するためのものだけど、書き換えは任意で義務ではなかった。(法改正によって徐々に義務化されるようです)
「代々の土地を相続してそこに住む」場合、何も問題が発生しない。
そして、登記を扱っているのは「民事局」で、死亡届の情報が共有されていない。
そのため、相続放棄された土地はそのままの登記で放置されたり、相続人が手続きをしなかったりで、「古い情報」のまま放置されていく。
そして、放置された登記を、売買や住宅ローンの担保にするとかの事情で改める場合、相続権のある全員に書面で同意を得なければならない。
お金も手間もかかる。
田舎の土地を売る場合、登記にn十万、司法書士に手続きを頼んでn十万……売値よりも法手続きの支出が多い、なんてことになる。
三代前とかになると、もう相続者が多すぎて実質的に無理。
というわけで、登記されずに放置される土地が急増。
さて、これの何が問題か。
「仮設住宅を建てる予定の場所」「高台移転の場所」は、その土地を政府だとか地方自治体だとかが「利用させてほしい」とか「買い取る」とかになるわけだけど。
登記からでは、その土地の持ち主がわからない!
村の共有地だったらしいけど、情報が古すぎて代表者そのほかとしか書いてない!
昔々の抵当権がまだ生きていて抹消しなければ転用できない!
という問題が発生。
それも、多発。
災害時における緊急的な土地利用ができない、という事態に陥った。
これが、仮設住宅建設や、高台移転が遅れた理由らしい。
しかも、この後、日本の地籍調査(実際にどれくらいの土地があるか測量する)が、半分ほど未完なんて情報も出てくる。
これも、実測すると登記されてるよりも土地が広くなって、納税額が増えるみたいな金銭的な事情でなかなか進んでいない。
民間だけでなくとも、役所にそんな専門家がいないとか、そんな予算どこにあるんだという官側の問題もあるらしい。
地震で無茶苦茶になったっり、津波で全て流された場合、この地籍調査をもとに土地を復元するという制度設定になってるらしい。
言葉もない。
前々から業界内外(法律家だけではなく林業や農業では問題として認識されていた)で問題視はされていたらしい。
でも、東日本大震災をきっかけに法改正が本格化して実現に至ったんだろうな。
難しめの本だけど、だからこそ日本の未来に必要な一冊。
【3冊目】一歩ずつ、理想へ近づこう『話し方に自信がもてる声の磨き方』
声にコンプレックスがある。
それもそう、そもそも話さない。
話すよりも文字を読んでいる時間が長い。
ボイストレーニングしたいけど、どうしたらいいかわからない。
ということで、このタイトルを手に取りました。
身体から力を抜きましょうというところから始まる。
動画付きだしわかりやすい。
毎日エクササイズをやって、自分の声に自信が持てるようになりたい。
【4冊目】GHQ、冷戦に翻弄される、日本!!『電源防衛戦争 電力をめぐる戦後史』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
いや〜、これも、これも濃い。厚い。
『ブルシット・ジョブ』は現在の隠れた社会問題から、資本主義社会の歪みを暴いていた。
このタイトルは、戦後の電気事業史を通じて、政治事情や利権争いの歴史を描く。
そこから、現在社会の闇が作られてきた経緯の一角が垣間見える。
電気事業史だけど、生活や経済の重要事項だからこそ、当時の情勢にもろ影響を受けいてる。
敗戦後、アメリカ中心のGHQ占領下にあった日本。
そして始まった冷戦に巻き込まれていく日本。
東日本大震災で問題が明るみに出た原発の経緯もわかる。
政治はあまり知らないので、そこら辺はちょっと理解が追いついてない部分もある。
それくらい濃い。
全てにおいて、現場で頑張って努力をし、真剣に問題を解決しようとする人たちが蔑ろにされていて、読んでいてかなり胸が痛む。
まず、戦前。
個人や個人企業が作った発電所は国営の日発に徴収された。
総力戦において発電所が国営会社に徴収される、という道理はわかる。
でも、そんなものも徴収されていたのか、知らなかったという驚きの方が大きかった。
そして、戦後すぐ。
戦後、電力再編では政治家(=利権を持っている事業家)の、自分たちの利益しか考えない政治争いに発展する。
もちろん、徴収された人々への補償はされなかった。
この時点でかなりの怒りが湧き起こる。
そして、水資源に頼った電源構成だった日本は、雨不足から電力不足に陥る。
社会では電力不足に対して、隣組を作って節電に対応しようという市民運動が始まろうとする。
が、「隣組」と名がついてしまったのが仇となって、GHQによって抑制されてしまう。
徹底的に、その手のものは駆逐されてしまったらしい。
そりゃ、現代において地球温暖化防止や水資源保護のために「家庭でできることをしましょう」と言っても虚しく響くわけだ。
市民が団結して何かをなす事自体は、圧倒的に善のはずなのに。
もちろん、それが暴走して戦争に発展したように見えても、それは、絶対に簡単には壊されちゃダメなものだったはずだ。
隣近所の人と協力する。隣人を愛せとは違うけど、根幹は同じじゃない?
宗教とか文化とか、そいうもの。
戦争に走った原因と言っても、国民性であることには変わりない。
戦後、GHQに市民運動の息吹をことごとく破壊されてしまった。
押し付け憲法よりもひどくむごいことだと思う。
で、さらに。
MARとかいう文化侵略組織!
新型コロナ流行後は検査にしか見えない英文字三つだけど、これが、もう本当に酷い!
わざわざ広島市長を招待し「原爆を落とされたのは日本の自業自得。アメリカに感謝している」と言わせる!
どういう看板を掲げていても、もう、酷いし許せない!
その一点だけで、もう信じられないでしょ!?
胸糞すぎる。
もしかして、現代の「SDOs」とか「ダイバーシティ」とか耳障りのいい言葉にも、裏があるのかも……。
なんて、思っちゃいません?
陰謀論がすぎると言われそうだけど、「流行らせようとするからには、どこかが利権を持っていけるカラクリがあるんだ」くらいは認識しておいた方がいいと思う。
で。
言葉だけは知っていたんだけど、レッドパージの実情が描かれていて、初めて何があったのか知った。
これがもうね、怒りとか通り越して虚しさしかない。
冷戦を背景に、市民の中で高まる反米感情を抑えるため、赤と揶揄される共産主義が悪になっていく。
電気事業においては、「共産主義社会を実現しよう」というよりも、「労働組合で労働者の権利を守ろう」という活動。
勤務時間や給料、休日なんかを先進的な条件で勝ち取っていた。
電源(発電所)の破壊を目論んでいるという事実が作り上げられていく。
レッドパージってなんとなく一塊のカタカナ語としか捉えてなかったけど、社会から「赤(共産主義者)」を「排除する」ってこと。
つまり、会社をクビにし、社会から追放する。
今の暴力団排除とかと似たような感じだね。
ある思想の人をそれだけの理由で排除するっていうのが、もう、極悪。
しかも、捏造した罪で行われる。
というか、もう、平安時代の御代から人間がやってることって変わらないのね。
当時は「時の天皇(あるいは権力者)を呪い殺そうとした」という捏造で政敵を失脚させて、その昭和版がレッドパージ。
一般市民に向かっている時点でなおさらタチが悪いけど、歴史の一ページにならないだけで、実際にはそういうことは無数にあったんだろうな。
このレッドパージの結果、真に業務改善を求めていた共産系以外の人も大量解雇に紛れこまされてしまう。
疑惑もあって、明らかに追放されないとおかしいような人が残って、出世していく。
ここに、今の、現場が蔑ろにされて、やれ非正規雇用で経費削減だなんだっていう日本の源流があるんだと思った。
労働者の権利を守る、より良い職場を作ろう、もっと消費者に寄り添った電力供給をしよう。
という人たちが、会社の上層にとって邪魔という理由で、「赤」のレッテルを貼られて、追放される。
生活のため、家族のため、会社に残るにはそれに迎合しなきゃならない。
一般市民の息苦しさや、自由がないやるせなさ、終戦で一度解放されたはずのそれが、またやってきてる。
確かに、空襲とか直接的な命の危機は無くなったかもしれない。
でも、レッドパージで失業したら、次の働き口はないどころか、社会追放。村八分でも葬式と家事は残るけど、資本主義社会で働き口がないっていうのはそもそも生きていけない。
朝鮮半島では戦争が起こっている、軍が解体され、戦争ができない憲法の日本は冷戦最前線基地としてアメリカに頼るしかない。
だから、仕方ない。
戦前の総力戦時代と何が違うんだろう。
けれど、その歴史の中で、日本に利益がなかったわけじゃない。
レッドパージの実行役の一人は、共産対策をアラブに売り込んだ。
それによって、日本にオイルを引っ張っってきた。
こういうこともある。
何もかも、善悪とか好悪で割り切れるわけじゃない。
というか、欺いているという自覚を持って、利になることをしないといけないこともあるんだと思う。
それが、どう評価されるかは後世の結果次第。
後世の歴史家だって判断しきれないと思う。
でも、今の日本経済というのは、そういう悪どい手札を切った結果、ある。
ってことは自覚しなきゃならない。
それに、これからも強かにそういう切り札を切らないと、魑魅魍魎の国際社会で生き残れないってことも。
そして、原発に至る。
福竜丸事件が起こったのが、この時期。
広まる反米活動を反共に陥れて沈静化するための「原子力平和利用」の情報戦が行われた。
この時点では、原発は技術的に実現していない。
米側は宣伝するだけで、実現までは考慮していなかったという。
だけど、専門知識のない政治家中心に推し進められ、科学者の意見が蔑ろにされつつ、原発の造成が急がれてゆく。
「原爆が落とされた日本だからこそ、平和利用をしなければない」という御旗の下で。
リアルに真摯に考える科学者たちの意見が無視されていくような、現場や専門性の軽視って何故、起こるんだろう。
そして、運営コスト以外のリスク、事故や被曝については何も語られないまま、「国内の技術育成のため」と採算も度外視で押し進められていった。
もう、何も言えない。
でも、こういうのって世の中にいっぱいあるよね。
国民の幸福を考えて、その分野の最適解を選んでいたら、そうはなっていないでしょっていうの。
この本は、電気事業史を通じて、それが何故かを教えてくれている。
政治的な事情と利権が絡んで、真摯に努力している現場が逆らえない圧力となって、歪められていく。
やるせ無いことばかり。
でも、読んでよかった、知らないままでいなくてよかった、という歴史が詰まった一冊だった。
【5冊目】政治の裏話的な雰囲気を読みたくて『殺されても聞く 日本を震撼させた核心的質問30』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
政治の裏話みたいな雰囲気、たまに摂取したくなりませんか?
朝日だし(それが悪いというわけではないんですが)、内容は話半分で読むつもりで借りてきました。
WW2を「昭和天皇が起こした」とか、事実誤認も甚だしいと思うのですが、まぁ、そういう感じで。
サラサラと読めるんですけど、内容がなにも頭に残らない。
これ読んだおっさんが得意満面で「自衛隊は違憲だけど、だからこそ日本は戦争を起こせないんだ」とか言ってそう……というのが感想です。
うーん、そろそろ、何か小説を読みたい。
皆様の読書ライフの充実を祈りつつ。