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1年前の『逆光』とこれからの『ABYSS』。

ちょうど1年前の今ごろは、毎日ドタバタと京都の町を駆けずり回り、行くさきざきでいろいろな人に出会い、くる日もくる日も楽しくて楽しくて仕方がなかった。きっとぼくの目はキラキラと輝いていて、それに伴って世界もキラキラと輝いて見えた。出会う人はみんな楽しそうに過ごしている人ばかりで、とくに根拠はないけれど、ぼくはこれからこの人たちのようにごきげんに生きていけるのだと、漠然と思えた。


というのは、ぼくは1年前の春、『逆光』という名の映画の宣伝配給をしていたのである。『逆光』という映画は、もともと役者をしていた須藤蓮くんが初めて監督を務めた作品で、脚本は渡辺あやさん。1970年代の尾道が舞台で、男女4人の青春群像劇を描いている。監督の蓮くんは、『逆光』が上映されている地域に滞在し、自らあいさつまわりをしたり、地域の人たちと一緒に催しごとをすることで、自身の初監督作品を宣伝配給していた。そんなことをしながら、1年ほどかけて広島・東京・京都・福岡・名古屋・岐阜を回った。そして、蓮くんが京都へやって来たタイミングで、いつの間にかぼくは『逆光』京都宣伝チームに入っていて、毎日朝から晩まで蓮くんや他2人の仲間(ユキカゲとカナタ)と一緒に、ポスターやチラシを抱えながら自転車を漕ぎ、ときには、額に入った『逆光』ポスターを抱えてバスに乗り込み、“歩く人間看板”のようになったこともあった。そんなふうにして、京都の町を縦横無尽に駆け回ったのである。そんな『逆光』の活動についての詳しいことは『逆光記』というnoteでの連載に記してあるので、そちらを熟読(あるいは音読)していただければ、『逆光』という映画が、蓮くんが、京都で、全国でどのように動き回り、どのようにして人を巻き込み、そしてなぜ、そんな場所にぼくが入ってしまったのかが、よくお分かりになることだろう。


みんなは蓮くんのことを台風だとか、嵐だとか、サーカスだとか、的のど真ん中を得たような表現をする。急に京都へやってきて、ほうぼうの大人に無理を言いながらも、その無理を実現させ、それが多くの人に喜ばれ、そして、気がつけばいつの間にか京都からいなくなる。一方、ぼくはといえば、これまでの22年間の人生のなかで、もっとも多忙で濃密な2ヶ月にしがみついていた反動なのか、あるいは、『逆光』の宣伝活動をやり切ったことで、いわゆる“燃え尽き症候群”に陥ったのか、兄貴分の蓮くんが京都からいなくなってから数週間は、なにごともやる気が出ない時期もあったりした。けれど6月には、ユキカゲやカナタと一緒に、2ヶ月間の『逆光』の記録や記憶を綴った『逆光記』という読みものを自費で制作し、いろいろな本屋などに置いてもらい、いろいろな人に読んでもらうなどした。さらに7月には、岐阜にある柳ヶ瀬商店街の夏祭り(なぜかこの祭りを蓮くんと渡辺あやさんがプロデュースしていた)の運営の手伝いをやって、全国で『逆光』に関わった人たちと集結!なんてこともあって、あのころは実に楽しかったものだ。


そんな楽しかった日々が、また戻ってこようとしている。『逆光』の旅が終わり、約半年間の準備期間を経て、蓮くんがようやく再始動したのである。蓮くんは数年前から温めていた映画『ABYSS』を完成させ、「FOL(Fruits of Life)」という活動を立ち上げ、東京に「FOL SHOP」という場所を作った。「映画の力で人と世界を輝かせる」という言葉を掲げ、自分の監督作品を多くの人に観てもらうことのみならず、町にあるお店や町に住む人と一緒になっておもしろいことをつくり出し、映画館をもっと人が集まる場所にしようと立ち上がったのだ。なんだか話が大きくて、ぼくも蓮くんやFOLがこれからどんなことになってゆくのか、よくわからないし、想像もできない。けれど、今年の秋から『ABYSS』は日本を巡回し、『Movie・Go-Around(通称:ムーゴラ)』という“映画サーカス”のようなものも一緒にやってくる予定だという。ぼくは今回も、関西担当(主には京都)として宣伝配給に関わらせてもらうことになった。ぼくは『逆光』でのご縁や経験をこの1年間あたためてきたつもりだ。それらを今回、存分に使って、『逆光』のときよりも多くの人に喜んでもらいたい。それに、ぼくにもより多くの経験とご縁があったらいいなと思うと、ワクワクせずにはいられない。


映画『ABYSS』の宣伝配給と「ムーゴラ」を実現するための費用として、4月2日からクラウドファンディングが始まった。クラウドファンディングのページには、蓮くんや渡辺あやさん、FOLメンバーたちの想いが詰まっている。なので、それを是非ともご一読いただきたい。そして、少しでも蓮くんの想いに共感できたならば、あなたの近くに『ABYSS』や「ムーゴラ」がやってきたときは、必ずや遊びにきていただきたい。さらに言うならば、クラウドファンディングへのご支援をいただきたい。蓮くんやぼくらが、思う存分楽しみながらまた京都の町を駆け回れるように、そして、映画が、文化が、エンターテイメントがこれからさき失われることなく、より豊かでおもしろいものになっていくための投資だと思って、力をいただきたい。どうか、よろしくお願いいたします。


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