『ALL ABOUT COFFEE コーヒーのすべて』
William Harrison Ukers 著
山内秀文 訳・解説
2017年 KADOKAWA
本書はコーヒーに関わるすべての人のバイブル「All About Coffee」(1935年)の要約であり、膨大な書籍を歴史を中心に圧縮されたものである。
コーヒーの歴史には欠かす事ができない山羊飼いの逸話から始まり大航海時代でのコーヒーと言う金のなる木の独占と奪い合いが始まる。個人的には、山羊飼いの逸話は真実かどうか調べないでそのままにしてほしい。日本でも「古事記」の国産みの話はそのまま受け入れたいと思っているから。
それはともかく、コーヒーの書籍を読むと巻頭に必ず歴史に関する記述があり今まで読んだものはほとんど、同じ事が書かれている。それだけこの書籍はしっかりした歴史をまとめているのだろう。
世界各地への飲料としてのコーヒーの広がりが続き各国の特徴や有名なコーヒーハウスの紹介があり、各国ともコーヒーハウスは議論や教育、政治批判等の場所であった事がわかる。特にフランス革命を起こした引き金になったのもコーヒーハウス(カフェ)だったのである。
酩酊の時代から覚醒にふさわしいできごとだった。
消費者から見たコーヒーの変化はアメリカの果たした役割が大きく、イギリスから押し付けられた紅茶を捨て去り新しいコーヒーが人々に広まって行く。
日本から見たコーヒーはほとんどがアメリカの知識で、100年前でも世界のコーヒーの主導的な立場はアメリカだったようだ。アメリカは焙煎機を作り大型化して大量生産の道を突き進んでいく。それに対してヨーロッパでは小型焙煎機で家庭で焙煎する事が多かったようだ。
残念ながら、日本はコーヒーをアメリカから学びコーヒーのスタンダードはアメリカにあるという考え方になっていった。ヨーロッパからコーヒーを学べば焙煎は特別ではなく家庭で気軽に出来る事がスタンダードになっていったのかもしれない。
次は生産国の話で南米についても、まだコーヒー危機はないので各国の特徴をまとめてある。
私はエチオピア イルガチェフィを好んで飲んでいるがまだこの時代にはエチオピアでの生産量は多くなくイルガチェフィ地域ではコーヒー生産をしていなかったようだ。
続いて、コーヒー機器や技術の話になり、色々な焙煎機やミルを考案して特許を取りだんだんと現在の形になって行く。特に抽出方法は透過式と浸漬式で、初期段階ではコーヒー豆を煮出す方式が主流で現在でも中東やヨーロッパの一部では煮出す方式でコーヒーを淹れるところもあるようです。
透過式でもお湯を通すスタイルや蒸気や高圧のお湯を通す方式もありそれぞれの特徴と味わいがあるようです。100年前にはほぼ現在の方式に固まっており、色々な工夫をしている人もYouTubeで見かけますがこの時代にほとんどのことはやり尽くしたようです。
この本でも長いですが原書はこの数倍の長編となり、われわれ一般人には必要ない専門的な話も多く収録されているようです。
とにかくコーヒーの歴史と技術的な話はほほ網羅していると言われていますので、何度か読み直して理解を深めたいと思います。
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