
【小説】みるならなるみ / シラナイカナコ (泉 サリ)
ガールズバンドと新興宗教、それぞれの世界に属する少女達の日常...というお話。
本当に17歳女子が書いたのかと思う程の文章表現、癖の強いロックな感じがする小説だった。
登場人物をどこか突き放している様なスタンスを感じさせる所は実にクールだ。
「みるならなるみ」はTHE青春小説という感じで、青臭くキラキラ輝き青春の光と影といった感じだった。
人の弱さやそれを覆い隠すような紙一重の振る舞いが主題なのだろう。
私的に過去、バンド活動をしていたので、それにおける葛藤や苦悩はあるあると思いながら懐かしくも煩悶しながら読んだ。
当時を振り返りつつも、継続というか、信念を持ってそれを貫くことは大切な事だなと思えた。
「シラナイカナコ」については小さな罪と表現されていたけれど、かなり大きな罪なのではと思えた。
動機は利己的で、それがどのように捉えられるかをある程度分かった上でやっている点や、結局その行為自体は誰も得をしない無意味な行為だと分かっている点は悪質だと思った。
そして、何気に直くんの異常さの様なものも表現されており、うっすらそれに気が付きつつも縋るしかないという歪さは本当に物悲しい。
新興宗教については誰も幸福にはしないという悲しさが打ち出されていたし、そんな不幸の連鎖が再生産される様も生々しかった。
いつの間にか代表にされていた恵令奈ちゃんについては何か罪悪感めいた感情を抱いた。
その中でしか生きられないという苦しさが伝わってくる。
創始者はとっくに逃げ出していたのだろうからやるせないよな...。
青春の残響にぶん殴られた様な気分である。