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【小説】みんな蛍を殺したかった (木爾 チレン)
スクールカースト底辺の女子高生3人の前に現れた美少女、蛍。冒頭、蛍が轢死した描写から始まる。蛍を殺したのは誰なのか...というお話。
オタク女子トリオが美少女に翻弄されるサークルクラッシャーもの、ルッキズムの残酷さとカースト底辺としてのオタクの話。
若さゆえの歪な嫉妬や羨望がいつの日か苦しみ、怒り、絶望に変わっていく。
登場人物がどいつもこいつもエゴイスティックで全面的に同情できる人物は少なく感じた。
美人かブスか、オタクかオタクじゃないか、スリムかデブか、という風に分かりやすいものがストーリーの軸。
これだけはっきりとルッキズムを書くのはと正直だし、ある意味清々しい。
外見だけに囚われて内面にも影響を及ぼして人生を破滅させたり、ルッキズムではない醜美が抉り出された展開と結末。
誰もが絶望しながら生きていて、飲み込まれて、ただただ堕ちていく。
オタク心理と美の高慢がどの場所にも存在していて、どれも狂気を孕んでいく事はそうあることじゃない。
そういう小さな行き違いや妬みを極端に描いている。
しかも思春期の葛藤を抜けてなお、誰も救われない。
そう言った事に強く共感する若者たちがいるのだろうと思うと、大人としてはとても切ないものだ。
後半にどんでん返しはあるがミステリーと言うほどロジカル重視でもなく、入れ替わりの件に関してはちょっと無理があるように思えた。
最終的な結末は巡り巡って自分の居るべき居場所に戻ってきたのかなと。
ただオタクに対する偏見は強い作品で、時代かなと思いつつ、現代ではどうなのだろうか?
歴史は繰り返すように迫害を受けている様であればそれもまた切なく思う。
みんな愛されたかった、みんなあなたになりたかった、ということなのだろうか。